『クマにあったらどうするか ―アイヌ民族最後の狩人 姉崎等』片山龍峯

アイヌ民族のクマ撃ちとして生きてきた姉崎さんへのインタビューを中心にまとめた本。曰く、クマは人間を恐れているので恐怖心を見せてはいけないとのことです。そらまあそうなんだろうけども、試してみるにはリスクが大きすぎるので、そう理解したからと言…

『批評の教室-チョウのように読み、ハチのように書く』北村紗衣

『批評の教室-チョウのように読み、ハチのように書く』をkindleで読んだ。 こんなブログをやってるくらいだから批評に興味はあって、ただし自分が書いているのはただの感想であることは承知の上だけども、文章でも映像でも作品がどのように作られたのか、ど…

現実のアメリカによるピーナッツへの影響『スヌーピーがいたアメリカ: 『ピーナッツ』で読みとく現代史』ブレイク・スコット・ボール

実家にはなぜか昔から「しょぼくれチャーリーブラウン」というペーパーバック版があったので、スヌーピーの漫画には小さいころから親しんでいた。ついで兄が同じペーパーバック版を、おそらく中野サンプラザの古本市等で買い集めたらしく20~30冊は今でも実…

ドキュメントというより俺エッセイ『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』済東鉄腸

「海外留学はおろか地元の千葉からもほとんど出ない引きこもりの映画オタクが、ルーマニア語と運命的な出会いを果たし、一回も海外に行ったことがないままルーマニア文学史に名を残した話。」という本書についての説明書きがあったが、厳密にはそうではなく…

『世界は五反田から始まった』星野博美

買った覚えのない本。著者の家は祖父の代から五反田あたりで町工場を営んでおり、祖父が遺した手記を通じて戦中戦後を生き抜いた家族と舞台である五反田界隈をまとめた本。ドキュメンタリーなのかな?私の父は戸越銀座あたりの生まれなので、郷愁を感じて買…

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹

新作が出ると聞いて、そういえば買ってあった村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだ。今回の作品は友達の輪から外された主人公が立ち直る過程で出来事の真相を究明しようとする、珍しくミステリ要素のあるお話であった。ただそれ…

『偽書「東日流外三郡誌」事件』斉藤光政

先日取材で南の島にいらした記者の方にいただいた本。 農家の天井裏から“発見”された、正史にない古文書「東日流外三郡誌」が世に出てから騒動が終息するまでを追ったノンフィクション。長期間にわたった騒動をまとめているので登場人物が多いが、その割には…

『シャーロック・ホームズの思い出』コナン・ドイル

Kindleの無料のシャーロック・ホームズを読んでいたら他のも読みたくなったので購入した第二の短編集。ただしKindle本(翻訳は戦前文壇の寵児・三上於菟吉)のような読みづらい文体ではないので若干拍子抜け。モリアーティ教授と対峙する「最後の事件」収録…

『シャーロック・ホームズの冒険』コナン・ドイル

" data-en-clipboard="true"> Kindleの無料のシャーロック・ホームズを読んでいたら他のも読みたくなったので購入したシャーロック・ホームズ最初の短編集。アイリーン・アドラーが登場する『ボヘミアの醜聞』、有名な『まだらの紐』はこの短編集に入ってい…

本屋大賞受賞『同士少女よ、敵を撃て』

逢坂冬馬の長編小説デビュー作。第二次大戦におけるソ連の少女狙撃兵の話。すごく研究してる感があり、終始『戦争は女の顔をしていない』を彷彿とさせるよなと思っていたら最後の最後に出てきて驚いた。ソ連というかロシアは今ちょっとアレな国で良いことば…

あなたは正しい事実に基づいているか?『ファクト・フルネス』

ちょっと前に流行った本。古い知識や思い込みは変なバイアスをかけてしまうことになるので、事実を押さえて情報のアップデートをしようという話。付け加えるなら統計は全体像を把握するには良いけど中央値を実像だと思い込んでしまうという弊害もあるので、…

著者LOVESロシア『ロシアを決して信じるな』中村逸郎

ロシア政府による日本への報復措置によりロシアに入国禁止になって喜んだことで話題となった中村逸郎の新書。基本的には著者のロシアにおける思い出エッセイ。ロシアの国民性と共にロシアへの愛情も伝わってくる。 ロシアを決して信じるな(新潮新書) 作者:…

キツネ、イヌガミ、オサキ『日本の憑きもの』

日本各地に伝承のあるキツネ憑き、イヌガミ憑き、オサキ憑きなどについて詳しい実例を挙げて、差別の原因に狭い社会における妬み嫉みがあることを明らかにしている。この分野では有名な一冊(らしい)。オサキの外観はオサキギツネだったりイタチのような動…

『世界史の中の蒙古襲来』宮脇淳子

岡田英弘の妻、宮脇淳子の新書。モンゴルについてはチンギス・ハンがモンゴル帝国を作り、孫のフビライが元を作り、勢い余って日本に攻めてきた、くらいしか学校で学ばないが、モンゴル帝国から元に至るまでをざっと説明しているのでモンゴルの入門書に良い…

SFの楽しみを再確認できる『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はオススメ

アンディー・ウィアーのSF長編。記憶をなくした男が目覚めるところから物語は始まる。少しずつ記憶が戻る中で人類を救うミッションに挑む姿はミステリ的な謎解きとSFがうまく溶け合っていて良い。オススメ。 プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンデ…

キリスト教への疑問を解決します『ふしぎなキリスト教』橋爪大三郎/大澤真幸

橋爪大三郎と大澤真幸の対談。西洋社会の根幹をなすキリスト教について、わかりやすく解説してくれる一冊。キリスト教と言っても範囲は広いので何から何までとはいかないが、根本的な疑問についてはかなり応えられていると思う。以下面白かった内容を箇条書…

『黒猫の三角』森博嗣

森博嗣のミステリ。 登場人物の名前は重要で、小説においては特に、特殊な苗字が多いと冗談になってしまう。漫画の場合はその限りではないので、自分勝手なルールであるとは思うがそう感じてしまうので仕方がない。実際にはあまりにも個性的な人物を揃えすぎ…

みんな煙草が大好きだー!『もうすぐ絶滅するという煙草について』

昨年末から体調を崩して煙草の量は半分以下に減っていたのだけども、3月くらいから今度は完全に止めてみた。意外と吸いたくはならないが、28年にも渡り続けていた習慣なので違和感は大きい。最近ようやく落ち着いてきたような気はする。体調は目に見えてよく…

kindleでの読書に慣れてきた、という話。

このところ目が痛かったり耳が痛かったりといろいろ忙しく、なかなか十分に眠れないことが続いている。眠れない時は本を読むのだが、kindleだと部屋を暗くしたまま読めるので、眠くなったらそのまま眠れるので良い。おかげでシャーロック・ホームズの短編を…

娘の死が悲しい『彼岸過迄』夏目漱石

新しい携帯は私のタブレットと比べても容量が大きいので、今まで入れられなかった(入れても動作が遅すぎて使えなかった)kindleをインストールし、青空文庫でいろいろとダウンロードしている。シャーロック・ホームズや夏目漱石が全部無料で読めるというの…

古代日本の基礎知識『日本国家の起源』井上光貞

日本という国の始まりは謎に包まれている。国家の起源が謎で正確なところがわからないというのは、おそらく珍しい部類に入るのではないだろうか。天皇家は神武天皇から始まり万世一系という神話を頭から信じている人はあまりいないが、古代天皇家の実在を否…

葉文潔は声に出して読みたい『三体』劉慈欣

宇宙に信号を送ったら返信があった!という中国のSF。SFも中国文学もあまり読まないので私の感想が適したものかどうかはわからないが、そもそも荒唐無稽な話を、現代中国史や物理学を織り交ぜて読者をしてなんとなく理解させてしまう程度に説得力を持たせて…

『夜中に犬に起こった奇妙な事件』マーク・ハッドン

" data-en-clipboard="true"> 障害を持った少年の身の回りで起きた事件を少年が記録した物語。少年が記録したものを読まされるという形式は面白かったが、私の心が汚れているせいか少年の成長に感動はしなかった。物語が唐突に終了した感じ。どちらかといえ…

『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」帝国陸軍戦法マニュアルのすべて』

太平洋戦争(大東亜戦争)末期の1945年8月に、新兵向けに配布された米陸軍の対日戦用マニュアル書「卑怯な日本軍」を題材に、第一章で「卑怯な日本軍」を解説、第二章以降では日本軍のマニュアルを見ながら日本軍の戦法を解説している。米軍のマニュアルは誰が…

世界初の痛風エッセイ集『痛風の朝』

痛風にかかった自らを「ツーファー」と呼び、プリン体の多そうな食べ物を食べたら「Tポイントがたまった」と自嘲する者たちの魂の叫びを集めた、世界初の痛風エッセイ集。読むだけでTポイントがたまりそう。 いろいろと集めた割に書いてあることは「痛い」「…

英国在住少年が乗り越えるハードな日常『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

カトリック系の夫と結婚したブライトン在住著者の息子の話。息子は高校から公立校に進んだことで環境がハードになり、様々な問題に巻き込まれつつも、少年なりにしっかりと考えて乗り越えていく姿を著者が見守る。 日本人は日本人がどう見られているかをすご…

人間のエゴと醜さを短くまとめた『脂肪のかたまり』モーパッサン

" data-en-clipboard="true"> モーパッサンのごく短い短編小説。印象的なタイトル。モーパッサンの出世作だそうで。普仏戦争で占領地域から逃げようとして捕らえられたフランス人のグループを描いた物語。敵兵と寝ることで仲間の窮地を救った心優しい娼婦が…

明治時代に南の島を探索した報告書は本物か『南洋探検実記』鈴木経勲

マーシャル諸島で日本人漂流者殺害の一報を受けて、調査のため現地に送り出された外務省の役人、鈴木経勲の報告書。他に軍艦金剛の練習航海の記録として『南洋巡航日誌』も収録。本書は公式に日本とマーシャル諸島が関係した時の記録として有名。 著者は英国…

男たちの悪夢?『アムステルダム』イアン・マキューアン

どこかでイアン・マキューアンの名前を見て、そういえば『贖罪』は面白かったなと、二匹目のどじょうを狙った1冊。結論から言うと、どぜうはいませんでしたというか、『贖罪』ほど面白くはなかった。 亡くなったモリーと付き合った過去のある4人の男(作曲家…

70年代日本人から見たアメリカ『淋しいアメリカ人』桐島洋子

イケイケに見えるアメリカ人も闇を抱えているんだねという話、体験記?著者がどういう人かよくわからない*1けども、なかなか鋭い洞察が多い。特に黒人問題については現代のBLMにまでつながる深い話。 著者の黒人へのスタンスは、差別する気はないけど自分と…