歴史に消えた古代図書館は誰もが想像できる方法で存続していた『失われた図書館』A・M・ディーン

映画化を狙ったような海外サスペンス小説を読む場合、姿を現さない悪者の描写とか、主人公が悪者と対峙する場面がすごくいらないと思うのだけども、それはおそらく読む原動力が謎の部分への期待にあるからである。ただ海外サスペンス小説の著者はどういうわ…

南の島と震災の記憶を描いた『絶唱』湊かなえ

湊かなえの連作集。神戸の震災で受けた様様な傷を南の島で昇華する話。ではあるが、それよりも南の島(トンガ)の日本人が描かれていてちょっとうれしい。そもそもミカさんより南の島の人がいい感じに出てくるということで勧められた本で、確かに大体こんな…

戦中戦後ドイツの混乱『ベルリンは晴れているか』深緑野分

深緑野分の長編ミステリ。舞台は第二次大戦後のベルリン。主人公は突然ソヴィエトの警察に拘束され、殺人事件への関与を疑われる。 まず舞台となる戦後ベルリンの圧倒的な情報量に驚く。翻訳小説っぽさもあり、これ書いたのドイツ人だっけ?と確認してしまっ…

RIP外山滋比古『思考の整理学』

外山滋比古が亡くなったので、追悼第一弾として『思考の整理学』を久しぶりに読んだ。ちょうど先日のシン・ニホンに書かれていたようなことが書いてあった。自分の頭で考えることの重要性である。30年以上前に書かれた本が今でも通用するというか、今こその…

現代民話考<10> 狼・山犬・猫

松谷美代子によって集められた明治以降の民話集その10。今回のテーマは狼・山犬、猫。 最近の日本で狼と言ってもウルフ千代の富士貢くらいしか思いつかないが、明治頃まではあちこちにいたらしい。東京でも稲城や府中、檜原村、私のお膝元である中野区などの…

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成

全日本から別れたプロレス団体の40年の軌跡。ではなく、ここ20年ばかり停滞している日本を立て直すためのアイディアの本。 人工知能の活用、女性や高齢者を労働力として生かすための働き方の改善、労働の生産性を上げることなどによりこれまでの遅れを取り戻…

とどめの一撃

第一次大戦前後のバルト海あたりの話。主人公と友人とその姉。主人公目線で語られたところによると、友人の姉は主人公を愛しているが、煮え切らない主人公の気を惹くべく、他の男と関係を持ち、それを主人公に報告してくる。そしてそれでも煮え切らない主人…

現代民話考〈9〉木霊・蛇・木の精霊・戦争と木

松谷みよ子によって集められた明治以降の民話集その9。今回のテーマは木霊・蛇等等。 蛇はヤマタノオロチを引き合いに出すまでも無く、元より生と死の象徴だったり神の使いだったり信仰の対象であり、身近な存在であるので話例も多い。驚くのは大蛇の話が多…

現代民話考1 河童・天狗・神かくし

日本民話界のエース、松谷みよ子によって集められ編集された現代の民話集。それぞれのテーマについて日本各地から集められた話が話者の口調そのままに収められている。 河童の話は全国から集められており実際に見たという話も多いが、天狗は気持ち東寄り、ま…

ぼっけえ、きょうてえ

岩井志麻子のホラー短編集。 タイトルにもなっている「ぼっけえ、きょうてえ」は岡山弁で「すごくこわい」という意味だそうである。収録されているのは、女郎が客に身の上話を聞かせる「ぼっけぇ、きょうてぇ」、流行り病の対策担当となった役人の話「密告函…

満願

米澤穂信のミステリ短編集。読者をミスリードさせて結末で引っくり返すタイプ。どれもきれいにどんでん返しが決まっているが、さらりとしているのでパンチが弱く感じた。盛り上がりに欠けるというか。 ただ『関守』だけは十分恐かった。落ちが読めてもまだ怖…

史上最強のCEO

独特の高テンションで痛いところを突いてその気にさせようとする自己啓発本。 そもそも「国内で初日に100万部突破!」が胡散臭い。出版社もあまり聞いたことのない会社だし、ググるとあちこちに勝手にポスティングされてたという話もあるし、何なんですかね…

漂流記の魅力

吉村昭の新書。漂流記とは、主に江戸時代に盛んだった船による運搬につきものの漂流についての記録である。多くは帰還者からの聞き書きが多いらしい。本のタイトルからして漂流記全般について語るのかと思いきや、2章以降は江戸時代、若宮丸が漂流してロシア…

星新一1001話を作った男

星新一についてのノンフィクション。 星新一と言えばショートショートの名手として知られているが、星製薬の御曹司であったことでも有名である。星製薬関連の話は星新一のエッセイを読んでいてもあまり出てこない。かわりに父・星一についてはよく出てくる。…

イギリス近代史講義

イギリスにおいて、どのようにして都市が形成され、どのように世界の需要に対応し、どのように工業化してきたか、という本。おおむねわかりやすい。本書で「成長パラノイア」という言葉が出てくる。未来は過去より便利で豊かで成長していなければならない、…

驚きの英国史

ノルマン・コンクエスト、マグナ・カルタ、アーサー王、アイルランド問題、フォークランド紛争といった英国史の出来事がイギリス(主にイングランド)人にとって、どういう意味を持つかということをまとめた本。どのエピソードも読みやすく面白くまとまって…

天下分け目の関ケ原の合戦はなかった

歴史の本には衝撃的なタイトルをつければ良い、と思っている人がいるのかいないのか、そういったタイトルは多い。この本がどちらに入るかはわからないが、本の主旨としては、従来言われていたような東西両軍の激突は無かったという意味で「関ケ原の合戦はな…

アングロサクソンと日本人

英国史をなぞってそれぞれの時代のエピソードを紹介しつつ、イギリスと日本を比べた文化論。出してくるエピソードが面白いので飽きない。 中でも面白かったのが第二章「国語が消えた」。これはかいつまんで言うと以下のようになる。 それまで古英語を話して…

フランクリン自伝

フランクリンと聞くと、どうしてもアレサ・フランクリンが思い浮かんでしまうが、こちらは100ドル札の顔、ベンジャミン・フランクリンの自伝。アレサの自伝だとタイトルが「ナチュラル・ウーマン」とかでありそうではある。 Aretha Franklin / Let It Be ベ…

昔話と日本人の心

西洋の昔話が女性を結婚して幸せに暮らしました、というハッピーエンドが多いのは、意識的に困難を乗り越え勝利と共に伴侶(もしくは他の物)を得て確立する父権的自我である、というノイマン*1の説を踏まえ、文化的な違いを考えてこれに対する「女性的な目…

骨が語る兵士の最期

一昨年末からウォッジェ環礁へ遺骨収容の手伝いに参加して、楢崎先生とお会いした。実は以前クワジェリン環礁で見つかった遺骨を焼骨した時にも来ていたらしい。ということには後から名刺を整理していて気がついた。その先生の著書。先生は今年の2月にテニア…

2019年、読んだけど感想をまとめてない本の一覧

この一年で 読んだけども様々な事情(主に怠惰)から感想を書くに至らなかった本の一覧をまとめて掲載してそのうらみを昇華させる。 改訂新版 文庫 時計の針はなぜ右回りなのか (草思社文庫) 作者:織田一朗 出版社/メーカー: 草思社 発売日: 2012/08/03 メデ…

偽史と奇書の日本史

偽の歴史と書いて偽史、そういうものが歴史上いくつも残っている。適当なことが書かれているだけでは誰も信じないが、それなりに裏付けらしきものとセットで出されたり、人が信じたいような内容であったりすると時に信じる人が出てきてしまう。よほどの荒唐…

アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方

海軍一のダメ軍艦(誘導ミサイル駆逐艦)「ベンフォルド」に配属された艦長が、成果の上がらない組織を立て直し、柔軟で自主性にあふれる「強いチーム」をつくり上げた、その驚きの手法とは? 残念ながら目からウロコの金言は言ってない。アメリカ海軍のやり方…

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

アウトプットを最大化するための仕事の基本原理とは、マネジャーが最も注力すべき仕事はなにか、タイムマネジメントの方法、意思決定のときにしてはいけないこととは、ミーティングはどう進めるべきか、1対1の面談(ワン・オン・ワン)ではなにを話すのか、人…

日本開国: アメリカがペリー艦隊を派遣した本当の理由

1854年、ペリー提督は大艦隊を率いて浦賀に再来航し、その威容をもって日米和親条約を結ぶ。しかし、その後の修好通商条約の締結は“ノンキャリ”領事ハリスただ一人に委ねられた。開国の目的は日本との交易ではなく、中国市場との距離を縮めるべく立案された…

知ってるつもり――無知の科学

冒頭でビキニ環礁の話が出ていて驚く。島民を避難させなかったビキニ以外の環礁への影響について、放射能の専門家たちが見落としていたことを例に挙げて、人間の知性が聡明であると同時に愚かであるとしている。言いたいことはわかるがアメリカ政府がその影…

秘密

1961年、少女ローレルは恐ろしい事件を目撃する。突然現われた見知らぬ男を母が刺殺したのだ。死亡した男は近隣に出没していた不審者だったため、母の正当防衛が認められた。男が母に「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と言ったことをローレルは誰にも話さな…

蒲生邸事件

一九九四年、予備校受験のために上京した受験生の尾崎孝史だったが、二月二十六日未明、宿泊している古いホテルで火災に見舞われた。間一髪、同宿の男に救われたものの、避難した先はなんと昭和十一年の東京。男は時間軸を自由に移動できる能力を持った時間…

カササギ殺人事件

1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死…