古代日本の基礎知識『日本国家の起源』井上光貞

 日本という国の始まりは謎に包まれている。国家の起源が謎で正確なところがわからないというのは、おそらく珍しい部類に入るのではないだろうか。天皇家神武天皇から始まり万世一系という神話を頭から信じている人はあまりいないが、古代天皇家の実在を否定できる人もいない。どこから信じるかが問題で、この本では応神天皇あたりからは確かだと言っている。確かに(天皇ではないが)神功皇后の話なんかはドラマチックに過ぎるので、説得力がある。この本は1960年と少し昔の本であるがその辺の定説みたいなのを学習するのには良い本だった。

 日本の国家起源=天皇家の始まりを考える時に参考にされるのが、まず中国の史書に出てくる邪馬台国倭の五王、それから記紀神話ほか国内の記録、そして実在の発掘された遺物などで、これらをパズルのように組み合わせて納得のいく説明が考えられるわけであるが、これがいろんな説があって面白い。この本では有名な騎馬民族征服王朝説についても取り上げられていて、時代を感じる。手塚治虫の「火の鳥」でも採用されていた説である。wikipediaを見たら著者の井上光貞という人はこれに賛同したことで有名らしい。

 あと面白かったのは天皇の名前(和風諡号)から色々考えているところで、これもまあ一般常識なんだろうけども、似たような名前はその名前を使っていた時代に考えられた後付けかもしれないね、という話。タラシヒコとかヤマトネコとか。

 古いのを読んだので次は現代最新の説も読んでみたくなった。ただある程度から先の詳しい話は、それこそ記紀の元ネタといわれる「帝紀」「旧辞」とかが見つからない限りはっきりしたことはわからないんだろうなあ。