不謹慎と爽快感の両立『ヴィーガンズ・ハム』

監督/脚本:ファブリス・エブエ(2021 仏)
出演:マリナ・フォイス、ファブリス・エブエ 他

結婚して30年になる肉屋の夫婦ヴィンセントとソフィーは、結婚生活も家業の経営も危機に陥っていた。そんなある日、店がビーガン活動家たちに荒らされ、ヴィンセントが犯人の1人を殺害してしまう。死体の処理に困ったヴィンセントは、ハムに加工して証拠隠滅を図る。しかしソフィーの勘違いでそのハムを店頭に並べると、思わぬ人気商品となり……。(映画.comより)


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 肉屋の夫婦がヴィーガンに復讐する話。夫が自信を取り戻し、夫婦仲も良くなっていくのがおかしい。

 人間は雑食だから食べてもおいしくないというのはジョジョか何かでも話題にあがっていた説だが、それを知ってか知らずか、草食のヴィーガンなら食べたらおいしいかも!=売ったら売れるかも!という奇跡のアイデアを、不謹慎かつ説得力のある筋立てで描いたコメディ。グロい描写もあるので万人受けはしないが、おすすめ。

 

ヴィーガンズ・ハム

ヴィーガンズ・ハム

  • マリーナ・フォイス
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アシスタントスタッフTさんの引き継ぎミーティング

風の強い日。

 さて四月も半ばとなり、「アシストしない」というアシスタントとして新たな境地を開いていたアシスタントスタッフであるTさんが、契約終了を目前に帰国することになったので、引継ぎをお願いした。観光客を案内するのに観光地を知らない、おつかいを頼めば完遂しない、とてもアナーキーなTさんだが、果たして引き継ぎはどうなるのか、興味がなかったと言えば嘘になる。

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ツバメウオが釣れました。

 そういえば長いこと釣りをしていなかったので、船で釣りに行った。お正月以来か。数は釣れなかったがツバメウオという大きな熱帯魚みたいなのが釣れた。竿が折れるかというくらいのすごい引きだった。重さ3キロくらい?水族館にいそう。唐揚げにしておいしくいただきました。

口から何か出ているツバメウオ

俎の上のツバメウオ

 

アメリカのアメリカによる戦争ドラマ映画『プライベート・ライアン』

監督:スティーヴン・スピルバーグ(1998 米)
出演:トム・ハンクスマット・デイモントム・サイズモア

1944年。連合軍はフランスのノルマンディー海岸に上陸するが、多くの兵士たちが命を落とした。激戦を生き延びたミラー大尉は、最前線で行方不明になった落下傘兵ジェームズ・ライアン二等兵の救出を命じられる。ライアン家は4人の息子のうち3人が相次いで戦死しており、軍上層部は末っ子のジェームズだけでも故郷の母親の元へ帰還させようと考えたのだ。ミラー大尉と彼が選んだ7人の兵士たちは、1人を救うために8人の命が危険にさらされることに疑問を抱きながらも戦場へと向かうが……。(映画.comより)


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 第二次大戦で4人兄弟全員が軍に入ったライアン兄弟のうち3人までが戦死したので4人目は死なせてはならんとお上の声がかかり、4人目を探しに行くことになった部隊の話。冒頭で描かれるノルマンディー上陸作戦の迫力がすごい。LCMのフタが開いた途端に頭を撃ち抜かれた人、上陸すらできずに溺死した人、爆弾で体の一部を吹っ飛ばされてそのまま苦しみながら放置された人、そういう人たちは忘れられがちではあるが間違いなく戦争の一部、歴史の一部であることを考えさせられてしまう。

 物語上では他にもいろいろな考えさせられるテーマ(一人を救出するために何人もの命が危険にさらされるのはどうなのよとか、味方を殺した敵の捕虜をどうするかとか)があってアメリカ的であるが、この冒頭の凄さで全て持っていかれた感があり、他のは割とどうでも良いというか、霞んでしまったというのが正直なところ。アパムがちょっと情けなさすぎるが、いやしかし現実にはこんなもんだろと思わされてしまうのも製作側の思う壺のような気がする。そういうところも含めてトムハンクスから何からすべてアメリカらしい映画だった。と思ったら監督はスティーブン・スピルバーグで、なんか納得した。

 

 

 

『首塚・胴塚・千人塚 日本人は敗者とどう向きあってきたのか』室井 康成

 あれはハワイのビショップミュージアムだったか、太平洋諸国の展示を見ている時に、「世界の首狩り族」的な展示があり、代表的な首狩りを行う部族として日本と台湾が挙げられていた。台湾はなんだったか近代に反乱的なものでそのような事件があったような気がするので良いとして、日本が首狩り族?と驚いたものだが、よく考えたら笹子才蔵とかさらし首とか、首を狩るのが大好きな民族であったことに思い至った。

 このように普段は首狩り族の末裔であることを忘れているような私でも、関東民であるから神田明神で産湯をつかい、は言い過ぎにしてもお参りは何度もしているし成田山には行かないし、というくらいの矜持はあって、将門の首塚が日本最恐心霊スポットと呼ばれることに暗い喜びを感じるものである。ではその首塚はなぜ首塚なのか、本当に首が埋められているのか、首塚は他にもあるけどその辺どうなってんだ?という疑問に答えてくれるのがこの『首塚・胴塚・千人塚』である。著者は日本の歴史を紐解きつつ、塚の成立前後について詳しく調べ上げた上で、本当に埋まっているかどうかよりも、なぜ本当に埋まっていると信じられているのかという点に焦点を当てて研究しており、そこに日本人の死生観を見出しているところがよかった。

 取り上げられている塚の埋葬者は蘇我入鹿大友皇子平将門平忠度平敦盛平重衡平宗盛、平清宗、源義経楠木正成新田義貞鳥居元忠大谷吉継島津豊久小西行長安国寺恵瓊長宗我部盛親井伊直弼近藤勇大村益次郎江藤新平西郷隆盛等等。巻末の塚リストは圧巻。オススメ。