男たちの悪夢?『アムステルダム』イアン・マキューアン

 どこかでイアン・マキューアンの名前を見て、そういえば『贖罪』は面白かったなと、二匹目のどじょうを狙った1冊。結論から言うと、どぜうはいませんでしたというか、『贖罪』ほど面白くはなかった。

 亡くなったモリーと付き合った過去のある4人の男(作曲家、新聞編集長、外務大臣、最後の夫)の話。編集長は最後の夫から外務大臣の秘密(女装写真)を手に入れ、スクープの寸前に反撃を受けて新聞社を追い出される。作曲家はミレニアムな交響曲を作曲していたが失敗。外務大臣は女装写真スキャンダルで失脚するかと思いきや、妻の協力で危機を逃れる。最後の夫による奔放な妻の元恋人たちへの復讐だったのかな。

 それぞれ社会的な地位のある男たちが悪夢のような事態に打ちのめされる姿が描かれているが、それを楽しめるような仕掛けは特になかったので、読後感が良くない。例えば終始情報が少なかった最後の夫に肩入れできるようなエピソードがもっとあれば違ったかなと思う。