吾輩は猫である

夏目漱石のデビュー作。これだけ有名な小説もなかなかないと思うが一応あらすじは猫が飼い主の苦沙味先生とその周りの人人を観察する話である。この猫がどこで身につけたのかちゃんとした教養を身につけていて、猫なりに解釈した人間というものをしっかりとした観点から批評しているのがやたらとおかしい。もちろんその批評は漱石の頭から出たものであるからそのまま漱石自身の意見である部分もだいぶあるだろうし、そういう意味では当人の身代わりである苦沙味先生とその周りの人人のようなそれなりの知識人に対してもほかに対するのと同じように滑稽に描写しているのも可笑しい。お終いの方で苦沙味先生の語る個人主義から結婚が不可能になる等の話は約一世紀を経過した今になって現実味を帯びてきているのもまた可笑しい。そういう可笑しい内容が独特のリズムのある文章で書かれていて、昔の文章てのは慣れてくるとなかなか癖になるものなのかもしれない。というわけで大変楽しかった。

吾輩は猫である (角川文庫)

吾輩は猫である (角川文庫)