獄門島

金田一耕助シリーズ。
昭和21年、金田一耕助は引き揚げ船内で死んだ戦友の手紙を届けるべく、彼の故郷・獄門島へと向かった。瀬戸内海に浮かぶ獄門島は封建的な古い因習の残る孤島だった・・・。
舞台から殺人の動機に至るまで、全てが封建的で古い因習に囚われていて、正に私が横溝作品に求めるものが詰まっている作品である。いわゆるマザーグース殺人事件ぽいのもポイントが高い。オススメ。
ちなみに謎を解く鍵となる言葉は最近ではたぶん放送できないと思うのだけども、映像化する際にはどうしてるんだろうか。気になるところ。と思ったら私はこの映画を見たことがあるんだった。感想にも似たようなことを書いていた。

獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

迷路荘の惨劇

金田一耕助シリーズ。
名琅荘(めいろうそう)は、明治時代の貴族が建てた別荘であったが、屋敷内のあちこちに仕掛けがあることから、地元の人々からは、別名「迷路荘」と呼ばれていた。昭和25年、金田一耕助は現在はホテルとなっている名琅荘に主人・篠崎慎吾から依頼を受けて訪れるが、その直後に殺人事件が発生する。
迷路のような洞窟、妖怪のような老婆など、道具立てが『八つ墓村』に似ているせいかあまり内容をよく覚えてないというのが正直なところ。

迷路荘の惨劇 金田一耕助ファイル 8 (角川文庫)

迷路荘の惨劇 金田一耕助ファイル 8 (角川文庫)

悪魔が来りて笛を吹く

金田一耕助シリーズ。
昭和22年、金田一耕助の元を訪れたのは、この春に世間をにぎわした天銀堂事件の容疑を受け失踪し、4月14日、信州・霧ヶ峰でその遺体が発見された元子爵の娘だった。父が残した遺書を持参した娘は、母が父らしい人物を目撃したと怯えていることから、父が本当に生きているのかどうか、明晩、占いを行うことになったことを説明し、金田一耕助にその占いへの同席を依頼した。
この作品では戦後の混乱と没落貴族という他の横溝作品とは少し違った舞台と登場人物だが、陰のある雰囲気は変わらない。物語冒頭でも語られているが、鍵となるフルートの絡ませ方が素敵。

悪魔の百唇譜

金田一耕助シリーズ。
東京世田谷区成城町の路上に置き捨てられた自動車のトランクの中から発見された女の死体は左の胸乳の下を刃物で鋭くえぐられていて、そこにトランプカードのハートのクイーンが血にまみれていた。
横溝作品の特色であるインモラルな話の一つ。でもあまりパッとしない印象。

仮面舞踏会

金田一耕助シリーズ。
昭和35年、銀幕の大スターの三番目の夫が死体で発見され、現場に駆けつけた金田一が見たのはテーブルの上に散らばった朱色や緑色のマッチ棒であった。
これもインモラルな話。推理小説の感想は詳しく書けないのでもどかしいが、小道具の使い方が印象的な話だった。わかれば納得のミスリード

仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

白と黒

金田一耕助シリーズ。
昭和35年金田一は古いなじみの元ホステスの案内で、彼女の住む日の出団地を訪れた。近頃団地内に怪文書が出回っており、それが彼女を悩ませているという。
いずれの作品においても、推理小説の類型に挑戦しつつ、同性愛・近親相姦といった様々なインモラルを描きつつ日本ならではのじめじめした情念をまぶした横溝正史がこの作品では「顔のない死体」にまた挑戦。
基本的に私が横溝作品を読む狙いは古い封建体質、古い日本が残る昭和という時代を読むことで、それは大袈裟に言うと現在とは異なる日本にあった別路線の日本の可能性を妄想することである。懐古趣味、と言うよりは(己の知識が足りないだけかもしないが)無くなったものに目新しさ感じ、また廃れたものへ勝手に郷愁を感じているというのが近いかもしれない。
それはそれとして今回読んだのは戦後の少し落ち着いた時期の話なので、古い日本という意味では少し外れてくるが、それでも、昭和30〜40年代であっても、現在とは異なる日本となった可能性というのは十分に潜んでいたように思う。

白と黒 (角川文庫)

白と黒 (角川文庫)

古本夜話

出久根達郎のエッセイ。
ちくま文庫出久根達郎!と思い喜んでいたら他のエッセイ2冊を1冊にまとめたものだった。しかもそのうち1冊は持っていた。

古本夜話 (ちくま文庫)

古本夜話 (ちくま文庫)

本の背中 本の顔

あらゆる本にまつわるエピソードをまとめたエッセイ。生業であるとはいえ、これだけ古本について(それだけではないけれども)いろいろ書けるということがこの人の感受性の豊かさの証拠である。加えて私が日本を離れてこちらに来るまでを過ごした高円寺界隈の雰囲気に溢れており、いつ読んでも読後感が気持ち良い。
新渡戸稲造の話か何かで、乱読は考え方が雑になり良くないとあった。気をつけよう。

本のお口よごしですが

出久根達郎のエッセイ。
古本屋になって三十余年、ようやく本の声が聞こえるようになったという著者の書物にまつわる話。漱石は本にどのような短評を書き入れたのか?古本にはなぜイチョウの葉が多くはさまれているのか?等等。

本のお口よごしですが (講談社文庫)

本のお口よごしですが (講談社文庫)

漱石を売る

出久根達郎のエッセイ。
漱石の直筆だからと買ったら弔辞で、売るのに苦労した話など。どうやら著者は売れるかどうかわからないものを何とか売りさばくのが好きらしい。

漱石を売る (文春文庫)

漱石を売る (文春文庫)

千尋の闇

ロバート・ゴダードのミステリ。
主人公は問題を起こして教職を追われた歴史学者。その彼が友人に呼ばれて訪れた先で、アスキス内閣の内務大臣まで務めた青年政治家が2年で失脚した謎を追え、という依頼を受ける話。その青年政治家のメモワールを軸に過去と現在が交錯し、主人公が謎に巻き込まれていく過程に有無を言わさず引き込まれてしまう。オススメ。

千尋の闇〈上〉 (創元推理文庫)

千尋の闇〈上〉 (創元推理文庫)

千尋の闇〈下〉 (創元推理文庫)

千尋の闇〈下〉 (創元推理文庫)

半身

サラ・ウォーターズのミステリ?
19世紀ロンドンの貴婦人が監獄を慰問する話。読み始めは主人公である貴婦人の繊細な神経と退屈な毎日にこちらが参ってしまいそうになる。『千尋の闇』もそうだけども、私は19〜20世紀初頭のイギリスがなんとなく好きなのでそれで何とか持った感じだったが、中盤から終盤にかけてはそれこそロンドンの霧のようにいつの間にか、気がついたら物語に引きずり込まれていた。そして結末にやられた。オススメ。

半身 (創元推理文庫)

半身 (創元推理文庫)