白と黒

金田一耕助シリーズ。
昭和35年金田一は古いなじみの元ホステスの案内で、彼女の住む日の出団地を訪れた。近頃団地内に怪文書が出回っており、それが彼女を悩ませているという。
いずれの作品においても、推理小説の類型に挑戦しつつ、同性愛・近親相姦といった様々なインモラルを描きつつ日本ならではのじめじめした情念をまぶした横溝正史がこの作品では「顔のない死体」にまた挑戦。
基本的に私が横溝作品を読む狙いは古い封建体質、古い日本が残る昭和という時代を読むことで、それは大袈裟に言うと現在とは異なる日本にあった別路線の日本の可能性を妄想することである。懐古趣味、と言うよりは(己の知識が足りないだけかもしないが)無くなったものに目新しさ感じ、また廃れたものへ勝手に郷愁を感じているというのが近いかもしれない。
それはそれとして今回読んだのは戦後の少し落ち着いた時期の話なので、古い日本という意味では少し外れてくるが、それでも、昭和30〜40年代であっても、現在とは異なる日本となった可能性というのは十分に潜んでいたように思う。

白と黒 (角川文庫)

白と黒 (角川文庫)