わたしを離さないで

カズオ・イシグロの長編小説。
「提供者」を介護する「介護人」である主人公による過去の回想。主人公たちが育ったヘールシャムの施設を中心に、友達との思い出、隠された秘密などが語られる。秘密周辺の話に違和感を感じながらも読みすすめていくと驚愕の事実が!と、解説には書いてある。
ここからネタバレになるのだけれども、驚愕の事実というのはおそらく主人公たちが体の一部を「提供」する人たちである点になるのだろう。ただ私にとってはこの小説がSFであったことが驚愕の事実だった。だってカズオ・イシグロて「日の名残り」の作者ですよ?
もちろんそういう点を別にしても、決められた運命に従って生きる人が、その運命に使命感を持ったり、逆に運命に抗ったりしつつ残りの時間を生きる姿には読む人の胸をうつものがある。一部の人々の一方的な都合で生まれ、利用されて死んでいくという状況にはいろいろと考えさせられることは多いのだが、こういうのを読んで楽しんでる読者てどうなんだろう、という点がもっとも気にかかる。
前にも似たようなことを考えたと思うんだけど、何を読んだのだろう。

わたしを離さないで

わたしを離さないで