仕立て屋の恋

ジョルジュ・シムノンの小説。
パトリス・ルコントの映画「仕立て屋の恋」の原作だが、映画の方はさっぱり内容を忘れてしまっていたのでちょうど良かった。以下あらすじ抜粋。

ひとりの娼婦が殺された。嫌疑をかけられたイール氏は、隣近所の誰からも嫌われている孤独な独身男だった。極端にきれいずきな彼の唯一の楽しみは、アパートの向かいに住む若く美しい娘アリスを覗き見ること―。夜ごと部屋の明かりをつけず窓辺に立って彼女の様子をながめ、静かに恋の炎をたぎらせていた。ある夜、彼は恐ろしい出来事を見てしまったことから、人生の歯車を狂わせはじめる…。

主人公のイール氏は孤独で(一応)善良で、悪い人ではなさそうなのだが、際立つ個性がなんとなくどことなく嫌われている。人好きのしない人、とでもいえばいいのか。読んでいても主人公なんでなんとなく贔屓目に見てしまうが、それでもやっぱり爽やかとは言えない。その特徴が彼自身の運命をなんとなく悪い方に転がらせ、転がるうちに大きくなった雪だるまのように結末を迎える。イール氏の個性のようになんとなくすっきりしない感じがきらいではない。

仕立て屋の恋 (ハヤカワ文庫NV)

仕立て屋の恋 (ハヤカワ文庫NV)