遠い山なみの光

カズオ・イシグロの長編小説。主人公悦子は長女を亡くし、帰省した次女と暮らしながら長女が生まれる前の出来事に思いをはせる。
読者が知りたくなる前後の事情の説明はほとんどないが、それだけに登場人物それぞれの価値観の衝突が、つよく心に残る。悦子の価値観の変化についても説明はないのでちょっと混乱する。
戦中戦後という混乱の時代を経る中で、価値観が劇的に変わったのは悦子だけではないということは他の登場人物からもわかるが、なにが変わって、なにが変わらなかったのか。簡単に答えられることではないが、考えさせられる。

遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)

遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)