捨てられるのを楽しみとする母、いやいやながら捨てる息子、この二人の気持ちが生生しい。特に楢山参りの日を早めるために自らの歯を石で砕く母おりんの姿は壮絶。その壮絶さは今読んで気狂いとしか思えない類の壮絶さだが、子のため、しきたりのため、世間のために信じる姿勢は宗教的で、否定できないものがある。
その背景となる姥捨ての景色も、山に転がる白骨遺体と、それをついばむカラスと、楢山参りの日に降ると運が良いという雪と、壮絶な景色が目に浮かぶ。
この本で大事なことは以下の3つ。
しかしこの3つをやり通すというのは、やったことある人にはわかると思うが、かなーり大変なことである。
まずマニュアル作りが大変である。私の脳味噌と人の脳味噌はちがう。簡単に言うと全くの素人でもこれを見れば間違わない!というのが優れたマニュアルなわけだが、それを作るのはすごく時間がかかる。だれか、作ってくれ。
それからアップデートも大変である。しばらく忘れているとどこから直して良いかわからなくなってしまう。下手すると一から作り直した方が早いんじゃないかということもある。だから毎月アップデートなのである。だれか、やってくれ。
そしてマニュアル通りやらせるのもまた大変である。スタッフはみな自分の好きなようにやりたがる。そうではなく、こうだ!と教え続けなくてはいけない。スタッフとのコンクラーベである。だれか、教えてやってくれ。
どうしても身に即した話なので情けない感じになってしまうが、まあそれだけ身につまされるような話が多かったということだ。文中にあった「標準がないと改善もない」というのはなかなかの名言だと思う。