驕れる白人と闘うための日本近代史

日本人の著者がドイツ人向けにドイツ語で書いてドイツで出版した本の邦訳。
短くまとめれば、日本が短い時間で近代化を成し遂げることができたのは鎖国をする間にすでに下地ができていたからであり、欧米がやさしく指導したからではなく、むしろ帝国主義に騙されたかられながら掴み取った近代化であり、その後対朝鮮・中国に侵攻したのはその教訓を生かしたに過ぎず、これは確かに大きな過ちではあったけれどもそれを教えたのは欧米諸国であり、戦後においてもいろいろ押し付けすぎだろ、という内容で、欧米人が日本に対して抱く優越感に対する挑戦であり、同時に幕末から明治・大正にかけての日本の対外政治がよくわかる。
特に幕末から始まる幕府〜明治政府の対外政策についてはわかったようなつもりでいたが、本書の説明でよく理解できた。具体的にはなぜ幕府が開国を渋ったのか、そしてなぜ開国に至ったのかという点と、明治政府の領事裁判権と関税規制の撤廃への取り組み。読んでいて悲しくなるほど涙ぐましい努力がなされたのである。
ではなぜここまで日本人、というよりアジアをはじめとする非欧米諸国が蔑まれなければならないのか、という問いに対して、著者は遠まわしにではあるが、キリスト教という一神教がその一因があるとしている。一神教ゆえの排他性から、欧米人は結局のところ異人種と相容れられない、ということを日本人は肝に銘じるべきであり、欧米のひとつの典型としてのアメリカがあるのだから踊らされてばかりいないで反面教師とするべきである、としている。
最後の章で著者は、日本人を確固たる意思もなく服従する「大勢追従主義」であるとの欧米の指摘に対して、自らの経験を引き合いに出して日本には個人の誇りからモラルを保つことで個人主義を表現できる人がたくさんいることを述べ、

(西洋人のように)もしみんなが自我を全てに優先してしまったら、社会は崩壊するという鎖国時代の感覚が一貫してまだ生きているのである。

と言っている。私の経験から言うと、もちろん大半の日本人はそうであるが、最近そうでない人間が増えてきているように思えて仕方がない。日本は多少外交で遅れをとっても品位では遅れをとらない国であってほしい。

驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫)

驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫)