失業中の主人公のもとから猫がいなくなったことをきっかけにおかしなことが起こり始め、挙句妻までが失踪し、主人公は妻を取り戻すために戦う。ざっくりとしたあらすじを書くとこのようになるがざっくりと書いても意味はわからない。事実をこまごまと並べた詳細は初めに読む気をなくさせ、次に情景を浮かび上がらせ、最後にいろいろな物事を包み隠す。そういう筆者の文体は好みの分かれるところで、率直に言って私の好みではないが気付くと引き込まれてしまうのは事実であり、なんとも悔しいところである。
さて気になるのはその暗喩の示すものであるが私の解釈では、社会とのつながりを失いつつある主人公が自分をも喪失しかねないことに気付き、その根源である歴史上繰り返される悪というか暴力の一つと対決する。結局妻が戻ってくるかどうかはまた別の話。この解釈に自信はないが書いていたらなんかそうなんじゃないかと思えてきた。また『海辺のカフカ』のときにも思ったが不思議を不思議として扱うとすっきりしないので、例えば間宮中尉の話と主人公の話をもう少し説明してくれる等してくれるともっとわかりやすくなると思うがどうだろうか。
ちなみにWikipediaによると『ねじまき鳥と火曜日の女たち』という短編が基になっているらしいので機会があったらそっちも読みたく思ってしまっていて、それもまたなんとも悔しいところである。
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