漱石初期三部作の三。
三四郎』で嫁に行った女性を『それから』で奪い返した主人公は『門』に至って自らの過去の影を引きずりながらもその妻と寄り添って日日を過ごしている。そして時間の経過によって薄れていくと思われたその影は、友人の登場によって主人公を再び捉える。主人公は参禅することに救いを求めるが救いは得られない。結局逃げている間に危機は去り、同じようなことがこの先何度も来ることを予感させつつも、何事も起こらずに春を迎える。
主人公が通りたいけど通れなかった門は、主人公にとっては希望と挫折であり、また明治という時代が末期に至るにあたって知識層が抱えた漠然とした危機感を象徴するように思う。面白いとは言いづらいが、なんというか深く考えて書いているんだなあと感心した。

門 (新潮文庫)

門 (新潮文庫)