むしろ賞を取らない方が良かったまであるかもしれない『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

監督:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート(2022 米)
出演:ミシェル・ヨーキー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス

 コインランドリーや家族の問題と、トラブルを抱えるエヴリン。ある日、夫に乗り移った"別の宇宙の夫"から全宇宙の命運を託されてしまう。そして彼女はマルチバースに飛び込み、カンフーの達人の"別の宇宙のエヴリン"の力を得て、マルチバースの脅威ジョブ・トゥパキと戦うこととなる。(Wikipediaより)


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 SF小説とかで、最後まで読むのに苦労する作品というのがたまにではあるが存在する。もちろん読みにくい理由は言葉のチョイスであったり、登場人物の行動であったりといろいろとあり、いずれも私の個人的かつわがままな理由にすぎないことは言うまでもない。SFを引き合いに出すのはSFの場合は世界観とかでそれが如実に現れるので把握しやすいというのもある。全体に下品すぎるのは苦手。かといって下品なのが笑えないわけではないのだが、意味がわからなすぎるのは苦手というか、好きではない。私が分からないだけなのかもしれないけども。

 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も私にとってはそういった傾きを感じる作品で、中国人のオバちゃんがマルチバースの他の自分から能力を借りてきて敵と戦うのは良い、娘がお年頃でいろいろと関係が上手くいってないのも良いんだけど、全体で見るとちょっとやり過ぎという印象。主演のミシェル・ヨーは素晴らしいカンフーを見せていたし、キー・ホイ・クァンのカムバックも話題ではあった。それでも何年か経ったらこの作品にアカデミー作品賞をあげたのはやり過ぎだったのでは、ということになりそうな気がする。

 ではダメな映画かというとそんなことはないのが歯がゆいというかもったいないというか。例えばこの映画が90年代後半に作られたものであれば、渋谷かどこかのミニシアターでロングランになっていそうではあるのだが、全国の映画館で大ヒットロードショー!というには違和感があり、そこにアジア枠への忖度を感じずにはいられない。もっとも、忖度だろうと何だろうと、とりあえず映画界の頂点は取ったんだからいいじゃない、という気もしないでもない。要するにブルース・リーではないが何も考えずに見た方が良い映画、なのかもしれない。