屋根の日本史

竪穴式住居から城郭まで、屋根職人が語る文字通り日本の屋根の歴史。当たり前だが屋根の見方が違う。
例をいくつか挙げると、例えば、瓦屋根は仏教伝来と共にやってきた当時の最新技術であった。にもかかわらず一般に普及しなかったのは、堅固な瓦は同時に防御力ともなる点を権力者に恐れられ、権力者だけが扱えるものとしていたからであった。至極納得である。
他には仏教建築において、参拝者の目線まで気にしている点。建築物を遠くから見ると、まず屋根が見え、ある地点からは軒先だけが見えた後、軒下が見えてくるのは屋根の勾配の延長線が地面と交わる点を超えたあたり。言われてみれば当然だが考えてみたこともなかった。
またお城好きとしては安土城大阪城に紙面を割いている他、有名な丸岡城の石瓦についても言及しているのがポイントが高い。著者は屋根の葺き方と構造から改築時期を推定しているが、こういうことができるのが本当のプロフェッショナルというものであるなあ。