踊るひと

出久根達郎の短編集。
最近は字を書く機会が減ってきたので、たまに自分が書いた字を見るとその汚さにぞっとする。文字を書くかわりにパソコンで入力した書類やメールを使うようになったが、汚い字にかわって誤字脱字が増えた。きれいな文章を書くには読み返すことが必要で、ゆとりなくしては難しい。加えて出久根さんが勧めるのは音読。読みづらい文章は声に出しづらいという。
この話からも感じられる言葉へのこだわりか、この短編集ではそれぞれの作品が異なる言葉、異なる語り口で書かれており、全く違う雰囲気を生み出してしまうところはさすがである。また「小説は著者が半分、読者が半分を作る」という自説の通り、結末を明示せずに落ちをあっさりとまとめて読者の想像に任せている部分も私好みだった。おすすめ。

踊るひと (講談社文庫)

踊るひと (講談社文庫)