秦の末期から始まり劉邦が項羽を倒すまでのいわゆる楚漢戦争の話。歴史は常にたくさんの人の思惑が交錯した結果だが、春秋戦国時代を経て諸子百家と呼ばれるものが生まれ、秦末期になってそれが熟して様様な人間の典型といえるような人物が現れたこの時代はそれが特に顕著で、だから面白い。そんな中で平民出身で民を食わせるという生の感触を持っていた劉邦が中華を制したことはさらに面白い。
この作品ではどちらかというとその劉邦に重きを置いているように思えるのだが、さわやか(というよりちょっとバカ)な項羽が死んだところで物語が途絶えており、その後の劉邦の即位と功臣の粛清等を語るまでには至っていない。個人的にそのあたりも読みたかったので尻切れトンボになっているような気がしないでもないが、作者がその後の劉邦に魅力を感じなかったということなのかもしれない。
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