奥御医師・松本良順とその弟子・伊之助あたりの幕末動乱の際の蘭方医とその周辺の話。幕末といえば最期の武士の活躍の場といった感があるが別の視点から新しい時代の幕開けを見たようで楽しかった。手塚治虫の「陽だまりの樹」と話が似通っているのだが、向こうの主人公も手塚家の何代か前の人で実在の人物。名前も性格も似ているので同じ人をモデルにしてるのかなと途中まで思っていたが「胡蝶の夢」にも種痘所のくだりでちらりと手塚良庵の名前が出ていたのでやっぱり違った。「陽だまりの樹」もあわせて読むとおもしろい。
ちなみに良順の弟子・伊之助、後の司馬凌海は作中では語学以外はどうしようもない人に思えるが、その教え子には後藤新平がいたりする。後藤新平は台湾総督なんかを努めた人でその下で動き回ったのが星薬科大学を作った星一、その息子が作家の星新一。このように意外なところで現代につながるとなんとなくにやりとする。
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