Whole Lotta Shakin' Goin' On

リトル・リチャード逝去のニュースを見て、私が上げた奇声で家族が驚いた。変な声が出ていたらしい。私はよく人の訃報に驚いて家族に呆れられるのだが、それはまた別の話。
 
思えば小学生の時分に我が家に初めて導入されたCDプレーヤーと共に父が買ってきたのは、新宿駅西口の特売スペースで売っていそうなオールディーズを中心としたオムニバスアルバムで、その中に「リズム&ブルース」というアルバムがあった。
 
 
このアルバムはサム&デイブ、アレサ・フランクリンジョン・リー・フッカーなどの曲が15曲くらい入っており、今にして思えば現在でも聴いている曲ばかりのシブい選曲であった。リトル・リチャードの「のっぽのサリー」もこの中に入っていて、明るく激しい歌声(というかシャウト)を気に入ってよく聴いたものである。
 
 
爾来私の中でロックンロールといえばリトル・リチャード、正確にはリトル・リチャードとチャック・ベリーでロックン・ロールの双璧をなし、一つの基準となっていた。身長2メートルもある大男のゲイであるとか、さらに人気絶頂期にロックンロールは悪魔の音楽であるとして牧師に転身してゴスペルを歌っていたが5年後にまたロック歌手として舞い戻り、ジミヘンをバックギタリストに従えてまた歌っていたとか、ロックなエピソードに事欠かない面白い人であると知るのはインターネットが普及してからの話。
 
そういうわけで先週末から車中ではリトル・リチャードの全曲リピートとなっている。子供の頃から聴いている曲は歌詞を聞き取れなくてもカタカナで覚えており、リトル・リチャードもその例に漏れないのだが、ふとハルカさんに「コレなんて言ってるかわかる?」と聞いたらあっさり聞き取られてしまった。ネイティブ耳のすごさよ。
 
 

When The Levee Breaks

プレーヤーから流れた音楽を紹介するシリーズ。今なら暇な人が多いだろうから聴いてくれるだろうという期待を込めて。


When The Levee Breaks-Magic Slim/James Cotton

Led Zeppelinのアルバム4枚目のWhen The Levee BreaksをMagic SlimとJames Cottonでカバーしたというぜいたくな曲。ZEP版ももちろん大好きだが、このカバーもまた甲乙つけがたい良さがある。

この曲はもともと「Whole Lotta Blues」という、ZEPの曲をブルースっぽくカバーするアルバムに収録されている。他の曲はやたらと軽く現代的な感じで残念だが、この曲だけはきっちりとブルースにしつつもギターソロは激しく、控えめに言って最高。もっとも好きなギターソロの一つ。

ちなみに上記動画を探していたら、もともとMemphis Minnieが歌っていたブルースをZEPがカバーして、それをまた企画ものでカバー、というのが正しい様子。知らなかった。歌詞はミシシッピ大洪水について歌ったもので、シンプルにして意味深。ZEP版はシリアスでさらに意味深な感じだが、Magic Slim & James Cotton版はやたらと明るいため、「雨が降り続けたら、堤防が壊れるんやで~♪堤防が壊れたら、居場所がなくなるんやで~♪大変なんやで~♪」と、関西弁(適当)で訳すとしっくりくる感じ。

 

イエスタデイ

監督:ダニー・ボイル(2019 英)
出演:ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズケイト・マッキノンエド・シーラン他

イギリスの海辺の町に暮らすシンガー・ソングライターのジャック(ヒメーシュ・パテル)は、幼なじみで親友のエリー(リリー・ジェームズ)に支えられてきたが全く売れず、夢を諦めようとしていた。ある日ジャックは、停電が原因で交通事故に遭遇。昏睡(こんすい)状態から目覚めると、この世には「ザ・ビートルズ」がいないことになっていた。(Yahoo!映画より)

 


映画『イエスタデイ』予告

 もしビートルズが存在しなかったら?という設定のみで突っ走った映画。オアシスやコカ・コーラ*1など、ビートルズに関係あるもの、またその他(関係しないと思われるもの)にも存在しないものがあるのは良かった。もっともその辺の消えた理由について説明は特にない。そういう映画ではないからそこは良し。
 説明がないと言えば、エリーがパッとしない主人公のマネージャーをしていることについても説明が少ない。エリーはジェニファー・ジェイソン・リーそっくりの美人だし、釣り合わなさ過ぎて裏に何かあるのかと思って見てしまった。幼馴染でそれなりにエピソードもあったので、もう少し早く説明してくれていたら座りの悪い気持ちにならずに済んだかもしれない。
 物語は名曲「Yesterday」の歌詞を地で行くようになっていて、歌詞では「昨日に戻れたらいいのになあ」となっているところ、ジョンに会えたのがターニングポイントとなったのか、主人公は彼女のもとに戻ってハッピーエンドとなる。現在(Yesterdayに対してTodayとなっていた)のエピソード内の主人公は、浮ついた世界から現実に戻ったせいか、いくらか落ち着いていたように見えた。
 エド・シーランは、おそらくビートルズ好きなんだろうと思わせる感じで好感が持てた。特に主人公のお父さんとの絡みが面白かった。主人公だけが面白くないんだよなあ。インド系を主人公にしたのは何故だろう?華がない彼と、それでも人気者になってしまうビートルズの偉大さの対比?そんな失礼なことはしないか。ビートルズは白人なんだし、白人のままでいいのに。有色人種への配慮ということもないと思うが、一人だけ浮いてるように見える。にもかかわらずそれでも彼にした理由は何なのか。気になる。
 以上気になる点を先に述べたら結構長くなった。音楽ネタの真打ともいえるビートルズで、監督はダニー・ボイルで、ということを考えると期待値が高くなってしまうのはやむを得ない。が、ビートルズ好きならちゃんと楽しめる映画であることは間違いない。エリー可愛いし。

イエスタデイ ブルーレイ+DVD [Blu-ray]

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  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: Blu-ray
 

 

*1:コカ・コーラビートルズの関係についてはあるのかないのかはっきりしないが、コカ・コーラ公式には関係あるようなことが書いてあったので、関係あるみたい。

ザ・ビートルズとコカ・コーラと伝説のクラブの知られざる歴史

漂流記の魅力

吉村昭の新書。漂流記とは、主に江戸時代に盛んだった船による運搬につきものの漂流についての記録である。多くは帰還者からの聞き書きが多いらしい。本のタイトルからして漂流記全般について語るのかと思いきや、2章以降は江戸時代、若宮丸が漂流してロシアに渡り、帰国するまでの記録になっている。江戸時代の日本人が見た異文化の記録としても興味深い。
当時船が遭難した時の手順というのは決まっていたらしく、まず①一同で丁髷を切って神様にお祈り、それでもダメなら②荷物を捨てる。最後の手段は③帆柱を切る。③により操縦不能となるが、帆柱は重く大きいので風や波の影響を大きく受けるとの由。つまり帆柱を切るという行為は眼前の死を避けるためとはいえ、助かった後の漂流が約束されてしまう選択であるわけで、そんな決断をしなければならない状況は考えるだに恐ろしい。
ちなみに人間が荒れた海に敵わないのは現在も同じで、マーシャルでも年に1~2隻、行方不明になるボートはある。1か月くらいかかって帰ってこれた人もいたかな。何年か前に、メキシコから流れ着いたと自称する人もいた。この人の場合はあまり日焼けしてないので漂流自体が怪しまれ、近海で麻薬の受け渡しをしていて海に落ちたんではないかとの噂もあったが、真偽は不明のままメキシコへ送還されていった。
閑話休題。若宮丸の人たちは一部は途中で命を落としたり、現地で妻を見つけてロシア正教に改宗してロシアに残ったりで日本に戻ったのは4人だけだったが、その4人も長崎につくなり牢屋に入れられ、放置される。これがつらい。取り調べを受けてさっさと故郷に戻りたいところだが、幕府は幕府で、開港を望むロシア側の取引条件にされては困るから、ロシア船がいる間は彼らに触れず放置。帰国早々のこの日本的対応を受け、4人は体調を崩し、さらにうち一人は気がふれて自傷に至ってしまう。政府の対応もわからないではないのがまたつらいところである。
結局4人が故郷戻れたのは取り調べが済み、江戸でまた聴取を受けた後、長崎についてから1年半後のことだったらしい。自傷した一人は故郷について間もなく死去。まったくロマンがあると一口で済ませることのできない話である。
漂流記の魅力 (新潮新書)

漂流記の魅力 (新潮新書)

  • 作者:吉村 昭
  • 発売日: 2003/04/10
  • メディア: 新書
 

 

子供たちと見た映画

 子供たちと「ドクター・ドリトル」「アナと雪の女王2」を見る。どちらも英語のままなので、大筋を追うので精一杯だった。
 ドリトル先生と言えば自分が子供の時に本を読んでいたものだが、今回はじめて「Do Little」をもじった名前であることに気づいた。有名なのかもしれないが、知らなかったので衝撃を受けた。ロバート・ダウニー・Jrが、なぜアイアンマンの後にこの役を選んだのかは謎である。
 
 「アナ雪2」は、アナとエルサの祖父が作ったダムにまつわる謎を解く話。結局母の存在は何だったのか?なぜ船があそこにあるのか?等の細かいところはよくわからなかった。精霊の仕業なんですかね。先住民族との関係は、アメリカ人から見たネイティブアメリカン観なんだろうけども、なんとなくモヤモヤする。クリストフの歌う場面は80~90年代ポップス(具体的にはシカゴか?)を彷彿とさせる演出で面白かった。