ベトナム帰還兵のいらだち『タクシー・ドライバー』

監督:マーティン・スコセッシ(1976 米)
出演:ロバート・デ・ニーロジョディ・フォスターハーヴェイ・カイテル

 ニューヨークの夜を走るひとりのタクシードライバーを主人公に、現代都市に潜む狂気と混乱を描き出した傑作。ベトナム帰りの青年トラヴィス・ビックルは夜の街をタクシーで流しながら、世界の不浄さに苛立ちを感じていた。大統領候補の選挙事務所に勤めるベッツィと親しくなるトラヴィスだったが、彼女をポルノ映画館に誘ったことで絶交されてしまう。やがて、闇ルートから銃を手に入れたトラヴィスは自己鍛錬を始めるが、そんな彼の胸中にひとつの計画が沸き上がる……。(Yahoo!映画より)


www.youtube.com


 ロバート・デ・ニーロベトナム帰りのイラついた青年を演じた作品。カンヌでパルムドールを受賞。アカデミー賞と縁がなかったのは意外。なにを語ってもいまさらな感のある70年代を代表する名作である。

 鏡に映る自分へ「I am faster than you」と勝ち誇るのは男子なら身に覚えのある感覚だろうけども、その中二感を越えた焦燥というか突き詰めた苛立ちが映画全体を通して見られたのが印象的。ベトナム帰りということでいえば『ランボー』のスタローンと同じといえば同じ、純粋なのも同じ、ただこちらには筋肉がない分その責任を転嫁しているように見えた。トラヴィスの行動は経験が足りなかったのか知恵が足りなかったのか、それらがあれば諸々の問題は回避されたのか、ベトナムに行かなければ問題はなかったのか。

 ただしそんなことを考えても長髪のヒモ、若きハーヴェイ・カイテルの見た目にすべてを持っていかれるほどの衝撃を受ける。マッチョでも長髪でも良いと思うがあそこまで印象に残るのはなぜなのか。帽子のせいか名前のせいか。ハーヴェイ・カイテルのためだけでも見る価値はあると思う。おすすめ。