監督:マーティン・スコセッシ(2019 米)
スコセッシのマフィア映画と聞くとたくさんありそうだが、その実そんなに多くは見ていなくて『グッドフェローズ』と『カジノ』くらいか。あとは『ゴッドファーザー』とか『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』あたりのイメージがごっちゃになっている。これらに共通しているのは見る前は長いとか重いとかいろいろと理由をつけて敬遠してしまうが見始めたらあっという間であることで、今回の『アイリッシュマン』もまた同じようにあっという間であった。
あっという間に思わせるのは物語の構成が良いのもあるけども、やはりデ・ニーロ、ジョー・ペシ、アル・パチーノ(ハーヴェイ・カイテルも!)という三役揃い踏みの出演陣による存在感が大きい。もう皆さん80代に差し掛かっているので映画中の現代パートで出てくる姿が現在のものに近いんだろうけども、AIの技術で若々しい姿が見られたのは期待していなかったのでうれしい限りである。とはいえ監督も含めてこの人たちが一堂に会して映画を作ることはおそらくもうないだろうことを考えると寂しい気もする。作品の方もまたこれまでの集大成というか、これまでだったらスタンド・バイ・ミー的にその後を語らせて終りとしていたようなところを現代パートで描いていたのが老いと向かいあうという感じで印象的だった。