ある日突然顔がハンサムになってしまった男の話。なんとなく同じフランスの映画『奇人たちの晩餐会』を思い出した。
全体的に面白いんだけども、結末の解釈がなんともいえない。鍵となるのは最後のエピソードにおける妻の反応で、妻が夫の友人の家に行きたくないと言い出したことに対し、夫である主人公は隠しておくつもりだった真相を妻に暴露。おそらく妻がその話を信じたかどうかの判断は読者に委ねられているのだと思う(このあたりが若干曖昧で混乱の元になっている気はする)が、その判断よってはこの作品の性格が一変してしまうようになっている。と、思う。
奥歯になにかが挟まったようなもの言いしかできないのは言い切るだけの自信がないからで、自信がないあまりに他所をちょっとのぞいてみると、幻想と皮肉に満ちた人間の悲喜劇とか、美男子になるという人によっては喜ぶべきところで喜べない喜劇とか書かれていた。
まあこの辺の曖昧さに加えて主人公の焦りからくる優柔不断さ、それらが全体の幻想的な雰囲気となり、すべて夢の中の出来事であったと読者に思い込ませるような読後感がある、ふしぎな小説だったことは間違いない。
- 作者: マルセル・エイメ
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/03
- メディア: 文庫
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