NETFLIXの心意気を感じる『Mank/マンク』

監督:デヴィッド・フィンチャー(2020 英)
出演:ゲイリー・オールドマン、アマンダ・サイフレッド、リリー・コリンズ、アーリス・ハワード、トム・ペルフリー、チャールズ・ダンス

 


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1930年代のハリウッド。脚本家マンクはアルコール依存症に苦しみながら、新たな脚本「市民ケーン」の仕上げに追われていた。同作へのオマージュも散りばめつつ、機知と風刺に富んだマンクの視点から、名作誕生の壮絶な舞台裏と、ハリウッド黄金期の光と影を描き出す。(テアトルホームページより) 

  今年のアカデミー賞は4月に開催なので、最多ノミネートと評判の『マンク』を見た。いかにも受賞しそうな作風というか要素を持っているが、先日亡くなったチャドウィック・ボーズマンもノミネートされてるらしいので、主演男優賞はそちらへ、からの「ワカンダ・フォーエバー!」までが予想されてしまう。代わりに作品賞か監督賞は取れるかもしれない。アカデミー賞はそういう影響を受けやすい向きがあるので、基本的には脚本賞しか信用していない。とはいえ、ノミネートされるくらいの作品は大体外れはない。

 本作品は『市民ケーン』の脚本を書いたハーマン・マンキウィッツを主人公に、『市民ケーン』のモデルとなった新聞王ハーストやオーソン・ウェルズとの関係等、脚本ができるまでのあれこれをよく描いた作品であるが、よく考えたら私は『市民ケーン』を見たことがないのだった。痛恨のボーンヘッド。それでも『市民ケーン』っぽさはなんとなくわかるので、その辺りをよすがにして楽しむことができた。

 なんといってもゲイリー・オールドマンである。口の減らないアル中というお誂え向きの役を演じている。ほとんど一人芝居。ただ劇中のオスカー受賞時でマンクは43歳くらいらしいので、ちょっと老けすぎなのか、そういうキャラなのかはよくわからなかった。

 全体的に当時の雰囲気が伝わって良い出来だと思うけども、『市民ケーン』と聞いて興味が持てない向きにはおすすめしない。そういう意味では見る人を選ぶ映画かもしれない。ただ、宣伝費をかけられる大作ばかりが劇場にかかっていた状況で、こういう映画がNETFLIXによって作られているというのは映画の選択肢増につながるので映画業界や映画ファンにとっては僥倖。さらにこのコロナ禍でしょ。インターネットがあって良かったねえ。もっと言うならこの「大作ばかりが劇場にかかっていた状況」というのは大会社の意向が強かった30年代ハリウッド、つまり『Mank/マンク』の状況にも似ているので、昨今の映画業界に立ち向かうNETFLIXの心意気のようなものを感じないでもない。