現代にも通じる1920年代黒人の悲哀『マ・レイニーのブラックボトム』

監督:ジョージ・C・ウルフ(2020 米)
出演:ヴィオラ・デイヴィスチャドウィック・ボーズマン、グリン・ターマン他

 


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1927年のシカゴ。野心家のトランペッター、レヴィーが所属するバンドは「ブルースの母」と呼ばれた伝説的歌手、マ・レイニーのレコーディングに参加した。レコーディングが進むにつれて、マ・レイニーは白人のマネジャーやプロデューサーと激しく衝突するようになり、スタジオ内がピリピリとした雰囲気になった。揉め事やトラブルが発生するたび、レヴィーたちはリハーサル用の部屋で待機を命じられた。待機中、レヴィーは自らの思いを他のメンバーに吐露し始めたが、それをきっかけにバンドの運命が大きく変わることになった。(Wikipediaより)

 
 先日『マンク』を見た際に、チャドウィック・ボーズマンアカデミー賞を受賞して「ワカンダ・フォーエバー!」、という予想をしたので、そのノミネート作品である『マ・レイニーのブラックボトム』を見たところ、彼も良かったけれど、マ・レイニーを演じたヴィオラ・デイヴィスがさらに良かった。不機嫌が服を着て歩いているような、画面に映っているだけで緊張させられる存在感、自分の歌の価値ひいては黒人の地位を貶めないための強さを見せていた。彼女と比べてしまうとチャドウィック・ボーズマン演じるレヴィーはいかにも小物で、演じた役柄の分、比べてしまうと弱いかもしれない。まあ比べるものでもないか。

 「ブルースの母」と呼ばれたマ・レイニーを題材にしていることからもわかるように黒人の文化に焦点を当てた作品で、作品中でも南部ほどひどくはないがジロジロ見られたり無視されたりと差別を受ける描写がある。最たるものは母親が襲われたというレヴィーの経験談である。これにはレヴィーをからかっていたバンドメンバーも返す言葉がない。ただ窮地で母が祈った神に対して、罵る言葉がmotherfuckerというのはどうなんだろう。笑うに笑えない場面だけども皮肉のつもりなのか。その後のレヴィーはバンドから追い出され、頼みにしていたバンドデビューもなかったことにされ、踏んだり蹴ったりな状態のところで些細な揉め事に激高してバンドメンバーを刺し殺してしまう。白人のせいで黒人同士が不利益を被るという意味では分からないでもないが、でもやっぱり刺しちゃダメでしょう。この辺りの見てらんない感じは黒人の悪いところを凝縮したようで、自虐が過ぎるというか、正直なところ理解できない点である。が、この作品は方々で絶賛されているとのことなので、黒人問題の切り取り方の一つとして合格点なのだろう。