1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死。病を抱えた名探偵アティカス・ピュントの推理は――。
前半はアガサ・クリスティっぽい作中作、後半はその作家が死亡するという現実の世界での事件というちょっと変わった趣向のミステリ。2つ比べて出されると自分のミステリの好みがよくわかる。私はクリスティ的なミステリの方が好き。
今までその理由は意識していなかったが、現代の事件は描写にいちいち引っかかってしまうのに対し、昔の描写は細かいことをよく知らないので頭に入ってくる情報が少ないからだと思う。
肝心の後半の犯人探しについては何となくわかってしまったのが残念。今「残念」と書いたが、ミステリ好きは犯人を当てたら良いのか当てられなくて悔しい思いをするのが良いのか。どっちが正しいのか。私はどんでん返しが好きなので当てられない方が良いのだが。
結論としてはクリスティ好き、もしくはちょっと凝った構成のミステリが好きな向きには読む価値はあるが、賞を総ナメにするほどかと言われると微妙。