ソフィー

ガイ・バートのサスペンス小説。
物語は若い女性がやはり若い男に監禁され頬を殴られた、という緊迫した場面から始まり、続いて若い男による、姉と共に過ごした「楽園」時代、そしてまた監禁という形で緊張と弛緩を交互に繰り返しながら「楽園」の秘密を解き明かしていくサスペンス。表紙の写真に釣られて買った。
「ぼく」マシューから見た姉・ソフィーとの楽しかった子供時代の思い出は郷愁を誘うだけに終らず、その「楽園」を守るソフィーの企みはグロテスクではあるけども弟への愛情というか健気さの発露であり、個人的にはグッとくるものがある。またなにより過去と現代を交錯させる構造と、「楽園」を「ぼく」の視点でしか見ることができないおかげで最後まで緊張感を保って面白く読めた。
解説には「加害者の犯行動機を命がけで模索する被害者の物語」とあり、まったく的を得た表現である。その動機に関わる二人の関係が過去と現在で逆転しているという一番大きな謎の他は全てが明らかに説明されているわけではないが、推して知るべしとして済む話であるようにも思えるし、また再読の際のお楽しみということにしてもいいだろう。おすすめ。

ソフィー (創元推理文庫)

ソフィー (創元推理文庫)