村上朝日堂

またもや村上春樹。これで家にあるものは全部読んだので村上春樹は終了、とするつもりだったが南房総が好きというくだりで不覚にも親近感が沸いてしまった。
小学校の時分に親が南房総に別荘を購入して以来、休みの度に出かけて行っては海に山に遊び、しかもそれは年を経て形を変えつつも結局日本を出るつい先年まで続いた行事の一つである。ちなみにその別荘があるのは保田というところで東京から特急に乗って2時間弱、車でも2時間半程度でついてしまうところである。菱川師宣生誕の地である他には岩場が多く砂浜の狭い海岸がスバルかなにかのCMで使われたらしいという噂があるぐらいでそれ以外は何の特色もないところである。唯一紙面で保田という地名をみたことがあるのは夏目漱石の「こころ」においてだが、その中でも確か石ころばかりが転がっている寂れた漁村に過ぎなかった。そしてそれは今でも大して変わらず、今のところ日本国内では保田よりも寂れた漁村を私は見たことがない。つまり南房総というのは栄える必要がないというか、いつまでも良くも悪くもそういうところなんじゃないかと思う。
話がだいぶ逸れたがとにかくそれだけの思い入れというか記憶を私は持っているので南房総自体に親近感はなくとも南房総に親近感を持つ人には親近感を持たざるを得ない。だから今後も村上春樹の作品を読んでしまうかもしれないし読まないかもしれない。

村上朝日堂 (新潮文庫)

村上朝日堂 (新潮文庫)