マイケル・ギルモアのノンフィクション。翻訳は村上春樹。
1976年に殺人罪で逮捕され、自ら望んで死刑になったゲイリー・ギルモアについて、その末弟である著者から見た、ゲイリーとその家族にまつわる、年代記というか記録。
著者は父祖の代から続く暴力と不幸にまみれた一族の系譜を一種の「呪い」として捉えていて、そのようにでも考えないとやってられないというところもあるのだろうけども、そして4人兄弟の2人までが不幸な死に方をしているというのはやはり何かしらよくないことがあると考えてしまうけれども、それでも残る2人は盗みもせず殺しもせず生きているのだから「呪い」という言葉で片付けてしまうわけにはいかない。
人間の出来が何によって決まるか、それは十人十色、様様な意見があるところだが、一つ言えるのは環境が与える影響はやはり大きいということである。当たり前のことを当たり前のこととして敬うことができるよう育てる人やモノ、そういった普通の人には普通に与えられる環境が著しく欠けた場合にこそ、不幸は大いなる不幸となり「呪い」となるのではないだろうか。逆に見れば誰でも殺人者となりうるということである。なんとなくこのあたりは消化不良。
テーマがテーマなだけに全編通して重苦しいのでオススメはしない。
- 作者: マイケルギルモア,Mikal Gilmore,村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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