抑揚を抑えたゾンビ映画『デッド・ドント・ダイ』

監督/脚本:ジム・ジャームッシュ(2020 米)
出演:ビル・マーレイアダム・ドライバーティルダ・スウィントンクロエ・セヴィニートム・ウェイツスティーブ・ブシェミ

 ロバートソン署長(ビル・マーレイ)、ピーターソン巡査(アダム・ドライヴァー)、モリソン巡査(クロエ・セヴィニー)が見守るのどかな田舎町センターヴィルで、死者が墓場から次々とよみがえる。ゾンビは生前の活動に引き寄せられるように町をさまよい、時間を追うごとに増殖していた。三人の警察官や葬儀屋のゼルダ(ティルダ・スウィントン)、住民たちは、生き残りを懸けてゾンビの大群に立ち向かう。(Yahoo!映画より)


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 ジム・ジャームッシュによるゾンビ映画と聞いてどんなものかと思ったが、まあ大体想像した通りだった。起伏の少ないジャームッシュ映画、起伏の激しいゾンビ映画、この二つが混ざるならまあ中途半端にならざるを得ないというか、抑揚を抑えたゾンビ映画になってしまうことは仕方ないというか、ジャームッシュによるゾンビ映画というしかない。せっかくの怪しいティルダ・スウィントンも、都会から来た三人組も、登場人物にテーマソングや脚本について言及させるメタな笑い、いわゆる第四の壁を超える笑いも、適当な文明への警告も、全てもう一つ物足りなかったように思うが、ここまで揃うと監督がやりたかったことはこの先にあったのかなと思わないでもない。

 それでも出演している多くはジャームッシュ映画常連の癖のある人たちなので、それなりに楽しい。中でも軽くサイコな感じのピーターソン巡査を演じたアダム・ドライバーが良かった。これこそが正解と言わんばかりに「Kill the Head!!」と叫んで首を切りまくる姿が印象に残った。