70年代日本人から見たアメリカ『淋しいアメリカ人』桐島洋子

 イケイケに見えるアメリカ人も闇を抱えているんだねという話、体験記?著者がどういう人かよくわからない*1けども、なかなか鋭い洞察が多い。特に黒人問題については現代のBLMにまでつながる深い話。

 著者の黒人へのスタンスは、差別する気はないけど自分とは異なる生き物であることを強く感じる、というもの。良くも悪くも同じカテゴリーに入れるには無理があるんじゃないかというのは、現代においても至極まっとうな感想であると私は思う。この手の話では声が大きいというか歴史の長さというか、とかく黒人ばかりが話題に上がるが、人種差別は黒人に限らず異文化間交流があるところには必ず顔を出すものである。どうしたって人はグループを作るし、人が集まればそれぞれの常識を作り出すから、私の常識はあなたの非常識ということになる。最近では自分にとって非常識だからと相手の常識を否定すれば差別だと言われかねない。そこで必要になるのは否定ではなく理解と歩み寄りである。とりあえず他人と自分は違うということを頭に叩き込んでおき、折折に思い出すしかない。

 と思うのだが、世の中そう思う人ばかりでもないらしく、余計なことを言って炎上したりしている。どちらも料簡が狭いというか、自分の見てる世界だけで判断しているようで、その常識が通じない世界があるかもしれないということは頭にない様子。少なくともそのように見える。これはあまり見栄えの良いものではないと思うので、他山の石として気をつけるばかりである。

 

*1:桐島かれん桐島ローランドのお母さんでした。といってもその二人をよく知らない