ミクロネシアは昔も今も大きく変わらない『ミクロネシアの民話 くじらとたこの戦い』

 タイトル通り、ミクロネシアの民話を集めた本。キリスト教的価値観が入る前の話なので、話の落ちに勧善懲悪というか因果応報的なものが少ない。それでも全くないわけではなく、いくつかは悪いことをすると報いを受ける、だから親の言うことは聞きましょう的な話もあった。圧倒的に海の話が多い。

 このあたりでは基本的に今でも昔話の世界とそれほど変わらない生活をしている島もあるので、想像はしやすい。実際に今住んでいる島の話もあってなお良い。また例えば天界の暮らしというのは当時の人々の理想の暮らしが行われていそうなものだが、昔話に出てくる天界で暮らす人々は地上の人々の生活とそれほど変わらず、ただ食べ物は料理しない(その辺に置いておくと太陽の力で干からびるのでそれを食べる)というのが面白い。今でもあまり凝った料理は作らないようだが、当時の人も料理が嫌だったのだろうか。

 出てくる人々も牧歌的というか、のんびりしていて良い。日本の「三枚のお札」的に敵から逃げる話では、お札の代わりにニワトリを投げ、それを見つけた追手はニワトリをながめ始め、しばらくしてニワトリを捕まえて帰っていってしまう。全てではないが出てくる人の多くは純粋というか素直というか、単純でほほえましい。

 ほほえましいといえばこの本は英語の本を翻訳したものなのだが日本語訳が拙いのもほほえましかった。1979年の本なので当時の和訳がその程度だったのか翻訳者の英語力(もしくは日本語力)によるものなのかはわからない。マーシャルの話で著者が「訳せない」として元の言葉をそのまま載せている部分があったので、従業員に翻訳してもらおうと思う。

 面白かったので他にもミクロネシアの民話を読んでみようと思ったが日本語ではほとんど出ていない様子。英語のは家にあるのでそれを読むか。でも英語は面倒くさいんだよなあ。