1Q84

村上春樹の長編小説。
村上春樹は作品に全てのアウトプットを注ぎ込む。特設サイトで見た著者と読者のやり取りを読んだ上で『1Q84』を読み、そのように感じた。
著者は小説を書かざるを得なくなって書くという。自分の中に溜め込んださまざまな物事を吐き出す。それが小説を書くということだという。であれば出来上がった小説はおそらくその時時の著者の考えと著者を形作る趣味の塊である。そういったものごとが制御不能にあふれたら普通の人で言えば夢を見ている状態であろうが、これを細部までコントロールしつつ、読者の触角に沁み渡る比喩で表現しつつ、物語という形にまとめたのが『1Q84』という作品。ではないかなたぶん。
であるから感想と言っても、青豆も天悟も良かったね、とか、舞台が途中から高円寺で楽しかった、とか、その程度のものになってしまう。ただ著者はおそらく一つ一つのものごとをすごく深く考えているだろうので、小説にちりばめられたそれらを読むのは楽しい。
あと引き出しの多さには素直に感心する。ジョージ・オーウェルの『1984年』は先に読んでおいて良かったかな。読まなくても意味はわかるけども。他にもスヌーピーのセリフとかモンティパイソンとかシェイクスピアとか。
以前と比べて素直に読めたのは、特設サイトで読者からの投稿に返信する著者を見て親しみを覚えたからである。去年大活躍だったヤクルトスワローズの山田をほしいと言うカープファンに対して、ムキになって「なにいってんですか、まったく。」と憤慨する姿は、言葉遣いが丁寧なヤクルトファンのおじさん、というかんじでおかしい。

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉後編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉後編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉後編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉後編 (新潮文庫)