某国の革命の余波が有名女子校に殺人事件を引き起こし、ポアロが解明する。簡単にまとめると荒唐無稽にみえる。だからこそ冒頭にわざわざネタばらしとも取れる話を入れたのだろうが、それでも突拍子もない感じは拭えない。ポアロも残り1/3ぐらいまで登場せず、ミステリというには物足りない感じ。
ところで、この作品とはあまり関係のない話だが、ミステリというものは読者を納得させることが重要である。明示された証拠に最後まで気がつかず、最終章で探偵がそれを示して「やられたー!!」と大団円を迎えるのがひとつの理想であるとすれば、鍵となる証拠なり理由なりを最後まで伏せておくのはフェアではないし、そうなってはもはやミステリとは呼べなくなる。そのために作者はあれこれと苦心して読者の納得のいく伏線をわざとらしくはならないように物語にちりばめなければならない。そのような理由から舞台はある程度閉じた世界(個人的にもっともふさわしいと思われるのは田舎のお屋敷)であることがふさわしいように思える。かくれんぼの際に境界を定めるのと同じこと。
- 作者: アガサ・クリスティー,橋本福夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/07/15
- メディア: 文庫
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