ヒューゴの不思議な発明

監督:マーティン・スコセッシ(2011 米)
出演:ベン・キングズレージュード・ロウクロエ・グレース・モレッツ
内容:パリの駅に住む少年がじいさんの秘密を暴く。

1930年代のパリ。駅の時計台にひそかに住む孤児の少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)の唯一の友達は、亡き父が残した機械人形だった。壊れたままの人形の秘密を探る過程で、彼は不思議な少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)とジョルジュ(ベン・キングズレー)に出会う。やがてヒューゴは、機械人形にはそれぞれの人生ばかりか、世界の運命すらも変化させてしまう秘密があることに気付き……。

映画への愛にあふれた作品で出演者も豪華だが、ヒューゴは「不思議な発明」をしないしイザベルは「不思議な少女」ではないし、機械人形は「世界の運命すらも変化」させない。なので肩透かしを食った気分。面白いんだけど。羊頭狗肉ではなく牛肉、みたいな作品。

ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ

監督:フランク・オズ(1988 米)
出演:スティーブ・マーティンマイケル・ケイン
内容:ペテン師と詐欺師の詐欺合戦。


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 80年代のアメリカ映画に、間違っても大ヒットはしないけどもしっかりと笑わせてくれる作品が多かったのは、1975年から始まったサタデーナイトライブ(SNL)の功績が大きい。番組で有名になったジョン・べルーシ、ダン・エイクロイドチェビー・チェイスビル・マーレイとかそのあたりのコメディアンが看板となって映画が作られており、SNLのノリで作られているので何となく雰囲気に通じるものがあり、SNL好きにはたまらない。ちなみにみんな大好き「ブルース・ブラザ−ス」もSNLのコントを膨らませたスピンオフ作品である。
 スティーブ・マーティンSNLのオリジナル・メンバーではないが、当時からゲストとして多く登場している(通算15回)ので「そのあたりのコメディアン」に含まれる。と思う。ただオリジナル・メンバーでないせいか、SNLノリとは少しだけ趣が異なっており、その分だけ映画にも向いていたのか、映画の出演作品は多い。
 本作「ペテン師とサギ師」も、そのスティーブ・マーティンの代表作の一つで、得意の顔芸、うさん臭いほど明るいアメリカ人(という演技)などを楽しむことができる。ちなみに障碍者ネタも得意で作品内で見ることができるが、今同じことをやったらいろんなところから抗議殺到間違いなしである。
 この作品のもう一人の主演がマイケル・ケインマイケル・ケインは1988年当時ですでに英国を代表する俳優であり、こんな映画に出るような人ではないが、だからこそ何をやっても面白い。キャスティングの勝利といえる。
 アメリカ人とイギリス人を体現する二人を詐欺合戦という形で競わせた監督は、スター・ウォーズヨーダの声でおなじみのフランク・オズ。「ブルース・ブラザース」のオープニングでジェイクに刑務所で預かっていた携帯品を返す人と言えば、誰もがその変な顔を思い出すことでしょう。
 総じて映画史に残るような作品ではないが、万人にオススメしたい作品。
 ちなみにもう一つ指摘しておきたいのが、日本語タイトルのすばらしさである。原題は「Dirty Rotten Scoundrels」で、直訳すると「汚い腐った悪党たち」。形容詞二つで二人の悪党を連想させようとしているのかなとも思うが、とにかくこれを「ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ」と訳してしまうのは大したものだ。最近はなにかとおしゃれな方向に持っていこうとするのが多く、こういうセンスのある邦題を見なくなって久しい。映画会社はこういうところにももっと力を入れるべきであると思うのは私だけではあるまい。

銃・病原菌・鉄(上・下)

ニューギニア人の友達から聞かれた「なぜヨーロッパ人がニューギニア人を征服し、ニューギニア人がヨーロッパ人を征服することにならなかったのか?」という疑問からはじまった、ジャレド・ダイアモンドの文化論。
タイトルの「銃・病原菌・鉄」は旧世界が新世界を征服するのに役立ったもので、前述の質問に対する答えは、栽培可能な原生植物の有無、家畜として育成可能な大型動物の有無等による食糧生産の可否、もしくは食糧生産開始時期の違い、文化伝播速度の差、人口稠密度の差等が大きな影響を与えたものの一つとして挙げられている。
もっといえばそれは大陸の形、気候の違いによるものなので、場所が同じであれば中の人を変えたところで大勢に影響はなさそうである。それはつまり人種による優劣を否定していて、その点で優秀な本である(もっとも歴史は偶然の積み重なりであることは否定していないが)。
ただこの手の本にありがちなことだが、例を上げたり説明を繰り返したりがしつこい。しつこいからこそわかりやすい面もあるかもしれないが、どうにかならないものか。それだけ例を挙げてしっかりと説明しているともいえる。ちなみに著者の奥さんは日本人。

ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー

監督:ロン・ハワード(2018 米)
出演:オールデン・エアエンライクウディ・ハレルソン
内容:ハン・ソロができるまで。
スターウォーズハン・ソロである。皮肉屋で自信家でええかっこしいの頼れるパイロットが帝国軍との戦いに加わるまでどのように過ごしていたかを描き、描きつつスターウォーズの世界をもっと堪能したいという向きを満足させるためのスピンオフである。タイトルが決まった時点で入り口と通過点と出口は決まっているが、そのなかでどれだけ意外性を出すかというハードルが用意された、なかなかに難しい映画化であったに違いない。
以下ネタバレを含みますが、そういう意味では元シリーズでの細々とした設定を伏線として回収することには成功していた。あとは意外性と本編につながる終わり方であるが、良い意味で期待を裏切ったのはあのおっさんが実はウディ・ハレルソンだったということくらいで、他にはサプライズと呼べるものは感じなかった。また終わり方も本編につながっていると言えるのかどうか。ダース・モールが出てきてアレー?この人知ってるー、と思うことが本編につながっていると言えるのかどうかだ。むしろ本編との間にもう一本くらいスピンオフ作るのかな?というのが正直な反応。
なのでその辺は今後の展開にもよるのかもしれないけども、スターウォーズ世界をしっかりと見せてくれたという意味では及第点。ただ期待値は相当高かっただろうので、一般的には評価が低めかもしれない。
[asin:B07DCCPS75:detail]

女と男の観覧車

監督・脚本:ウディ・アレン(2017 米)
出演:ケイト・ウィンスレットジャスティン・ティンバーレイクジュノー・テンプル、ジム・ベルーシ他
内容:夫の娘が帰ってきて、主婦の日常をぶち壊す。
一時帰国中に映画館で見ることができた。
1950年代のコニーアイランドで働く、感情的になりすぎる女給のアップダウンをケイト・ウィンスレットが圧巻の演技。特にラスト近くの長回しの独白。
私個人の好みでいえば明るく楽しいウディ・アレン監督作品が好きなんだけども、愛憎劇も一定数あるんだったーと思い出させてくれる。『ブルー・ジャスミン』とか『夫たち、妻たち』とか。感情で激しく歪んだ人というのは笑えるものでもあるけども、ウディ・アレンは、もしくはこういう作品で笑える人は、そういう暗い笑いと明るい笑いとの違いをどうとらえているのだろうか、それとも同一線上で論じることができるのか気になった。