銃・病原菌・鉄(上・下)

ニューギニア人の友達から聞かれた「なぜヨーロッパ人がニューギニア人を征服し、ニューギニア人がヨーロッパ人を征服することにならなかったのか?」という疑問からはじまった、ジャレド・ダイアモンドの文化論。
タイトルの「銃・病原菌・鉄」は旧世界が新世界を征服するのに役立ったもので、前述の質問に対する答えは、栽培可能な原生植物の有無、家畜として育成可能な大型動物の有無等による食糧生産の可否、もしくは食糧生産開始時期の違い、文化伝播速度の差、人口稠密度の差等が大きな影響を与えたものの一つとして挙げられている。
もっといえばそれは大陸の形、気候の違いによるものなので、場所が同じであれば中の人を変えたところで大勢に影響はなさそうである。それはつまり人種による優劣を否定していて、その点で優秀な本である(もっとも歴史は偶然の積み重なりであることは否定していないが)。
ただこの手の本にありがちなことだが、例を上げたり説明を繰り返したりがしつこい。しつこいからこそわかりやすい面もあるかもしれないが、どうにかならないものか。それだけ例を挙げてしっかりと説明しているともいえる。ちなみに著者の奥さんは日本人。

ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー

監督:ロン・ハワード(2018 米)
出演:オールデン・エアエンライクウディ・ハレルソン
内容:ハン・ソロができるまで。
スターウォーズハン・ソロである。皮肉屋で自信家でええかっこしいの頼れるパイロットが帝国軍との戦いに加わるまでどのように過ごしていたかを描き、描きつつスターウォーズの世界をもっと堪能したいという向きを満足させるためのスピンオフである。タイトルが決まった時点で入り口と通過点と出口は決まっているが、そのなかでどれだけ意外性を出すかというハードルが用意された、なかなかに難しい映画化であったに違いない。
以下ネタバレを含みますが、そういう意味では元シリーズでの細々とした設定を伏線として回収することには成功していた。あとは意外性と本編につながる終わり方であるが、良い意味で期待を裏切ったのはあのおっさんが実はウディ・ハレルソンだったということくらいで、他にはサプライズと呼べるものは感じなかった。また終わり方も本編につながっていると言えるのかどうか。ダース・モールが出てきてアレー?この人知ってるー、と思うことが本編につながっていると言えるのかどうかだ。むしろ本編との間にもう一本くらいスピンオフ作るのかな?というのが正直な反応。
なのでその辺は今後の展開にもよるのかもしれないけども、スターウォーズ世界をしっかりと見せてくれたという意味では及第点。ただ期待値は相当高かっただろうので、一般的には評価が低めかもしれない。
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女と男の観覧車

監督・脚本:ウディ・アレン(2017 米)
出演:ケイト・ウィンスレットジャスティン・ティンバーレイクジュノー・テンプル、ジム・ベルーシ他
内容:夫の娘が帰ってきて、主婦の日常をぶち壊す。
一時帰国中に映画館で見ることができた。
1950年代のコニーアイランドで働く、感情的になりすぎる女給のアップダウンをケイト・ウィンスレットが圧巻の演技。特にラスト近くの長回しの独白。
私個人の好みでいえば明るく楽しいウディ・アレン監督作品が好きなんだけども、愛憎劇も一定数あるんだったーと思い出させてくれる。『ブルー・ジャスミン』とか『夫たち、妻たち』とか。感情で激しく歪んだ人というのは笑えるものでもあるけども、ウディ・アレンは、もしくはこういう作品で笑える人は、そういう暗い笑いと明るい笑いとの違いをどうとらえているのだろうか、それとも同一線上で論じることができるのか気になった。

トラブルボックス/恋とスパイと大作戦

監督・脚本・出演:ウディ・アレン(1994 米)
出演:マイケル・J・フォックス
内容:アメリカ大使館での大騒動。
共産主義の国でスパイ容疑をかけられた旅行者を大使館に匿い、大使館関係者が国外へ脱出させるため作戦を立てる。と書くと、在イランアメリカ大使館人質事件を描いた映画『アルゴ』と間違えそうになるが、こちらはウディ・アレンによるテレビ映画で、まじめなところは一つもないので、間違えてはいけない。日本未公開作品。
未公開というからにはそれなりの理由があって、少なくとも日本の映画会社から見てこの映画は買いではなかった、つまりお客が入るとは思わなかったのだろう。そもそもマイケル・J・フォックスウディ・アレンという組み合わせに無理がある。映画を見る限り全くダメではないのだが、マイケルのファンがウディ・アレンを見たがるか、ウディ・アレン映画にマーティ・マクフライがはまるか、という話である。ただその難しい組み合わせにもかかわらず、なんとなくウディ・アレン作品としてはまとまっているので、全くの駄作というわけでもない。惜しむらくはヒロインがあまり可愛くないので盛り上がりに欠けることか。どちらかの余程のファンでなければ見なくてもいいかな。

ヘイル、シーザー!

監督・脚本・製作:ジョエル・コーエンイーサン・コーエン(2016 米)
出演:ジョシュ・ブローリンジョージ・クルーニーオールデン・エアエンライクレイフ・ファインズジョナ・ヒルスカーレット・ヨハンソンフランシス・マクドーマンドティルダ・スウィントンチャニング・テイタム
内容:ハリウッドの何でも屋がスターたちの起こす問題に振り回される。
どこかで似たような話を見たことがあると思ったら、ウディ・アレンの『カフェ・ソサエティ』だ。あれもハリウッドの内幕ものだった。そういえばコーエン兄弟は『ザ・プレイヤー』でも似たような話を作っていた。よっぽど日頃から鬱憤がたまっているのか、そういう逸話をたくさん聞かされているのか。
登場人物たちは誰も彼も一流スターで、でも、というかそれゆえに少しズレていて、そのズレの蓄積が笑いを生む、コーエン兄弟得意のシニカルなコメディへとつながっている。ただそれだけにその笑いをすべて把握できたかというと自信はないが、まあ十分笑えたので吉としよう。