- 作者: 内田百けん
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/01/01
- メディア: 文庫
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主人公の視点は常に「私」なので、どの話でも私の脳内では私の中で作り上げられた百輭先生像が「私」。その「私」と主人公の行動がちぐはぐになることもないので間違った像ではない様子。
この短編集は特に奇妙な人物が多かったように思う。「サラサーテの盤」では、亡夫のレコードを取りにやってくる友人の奥さんが奇妙。「ツィゴイネルワイゼン」という曲を演奏したのがサラサーテという人で、その演奏を録音したレコードが「サラサーテの盤」で、借りっ放しになっていたレコードがコレ。「南山寿」の「私」の後任の先生も奇妙。東京怪奇ツアーのような「東京日記」では、特に丸ビルが消えたことを意に介さない周りの人が奇妙。そして「とおぼえ」では亡くなったのに現れる妻に震えるおっさんが奇妙。あ、幽霊話が多いといえば多いような気もする。ということは「南山寿」の後任の先生も幽霊かなぁ。
「柳検校の小閑」が白眉。「東海道線刈谷駅」の宮城は「柳検校の小閑」の柳検校のことだろうか。更に百輭先生のほかの作品で、刈谷駅で友人を偲ぶ話があったので同一人物かな。疑問が疑問を呼ぶ百輭先生でした。