面白いけど『パラサイト 半地下の家族』

監督/脚本:ポン・ジュノ(2020 韓)
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム他
 半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れる。(Yahoo!映画より)

 


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 以前の職場が新御徒町にあって、昼食は先輩社員に連れられて近くの商店街やその周りのお店に行くことが多かった。その前は事務所が新宿西口にあったので、それと比べると味も価格もだいぶ庶民的、いつも行っていたのはお蕎麦屋さんが一番人気、その他にラーメン屋、定食屋、喫茶店等等。しかしたまに先輩社員、中でもトラブルメーカーのTさんがたまには他のところへ行こうと言い出して新規開拓をすることがあった。ちなみにトラブルメーカーと書くと語弊があるかもしれないがTさんはいたって普通の明るいおじさんで、ただエアコンを買えば取付工事の人があり得ないくらい雑だったり、新車を買ったら走行中にフロントガラスが外れたり、出張で宿泊しているホテルが火事になったりするのがTさんだった。トラブルメーカーというより疫病神もしくは不幸につきまとわれた人なのかもしれない。思えばTさんの感覚は少しずれていたのか、おいしそうな店を見つけてきたと言っては皆を連れて行く先はいつも怪しい店が多かった。
 そのTさんの怪しい新規開拓先の中に、ある韓国料理のお店があった。韓国料理と言っても焼肉とかそんなわかりやすいものではなく、ちょっと間口の広い民家の店先にハングル文字の看板が置いてあるだけの店である。Tさんがなぜその店が料理屋と判断したのかはよくわからないが、引き戸を開けて中に入ると店員とお客の鋭い視線が痛かった。なんだこいつら?という、異物を見る目を受け流して席についた。メニューはあまり見たことないような韓国のお惣菜的なものが2、3皿とスープと白米の定食が何種類かだけだったので、それぞれ適当に頼んだ。出てきた料理は普通の定食のように見えたが、辛いものはすごく辛く、甘いものはすごく甘い。どれも味が濃すぎて私の口には合わなかった。周りを見ると先輩社員たちも似たような感想だったようで、半分くらい食べて足早に店を出たのだった。好き嫌いは別として、ああいう強烈な味を食べてる人とそうでない人はいろいろな面で違ってくるよねと、後になって先輩社員たちと話した。ちなみにTさんはその後もまたあの店に行こうね!と言って周囲を閉口させていた。
 前置きが長くなったが私の韓国のイメージというのは以上のようなもので、その他に判断材料もないわりに間違ってもいないと思っているのだが、前評判の高かった『パラサイト』もまた同じような感じであった。新御徒町の韓国料理屋の味よりは好みに合っていたが、それでも血塗れとか下水とかのどぎつい描写は好きではない。ジャガイモみたいな顔をしたお父さん一家が金持ち一家にとりついていく過程は面白くブラック・コメディとしては秀逸だが、類を見ないというレベルではないと思うので、オスカーだパルムドールだというほど高評価なのはちょっと理解できないのだが、もしかしたらそういうところが新鮮に映ったのかもしれず、日本で韓国映画が受ける点はそういうところにあるのかもしれない。