阿房列車

阿房列車―内田百けん集成〈1〉 ちくま文庫

阿房列車―内田百けん集成〈1〉 ちくま文庫

百輭先生の趣味の阿房列車は、百輭先生の大好きな列車に乗ることを目的とした旅行のことで、目的がないのであまり利口ではない。利口ではないので阿房列車とよぶ。阿房列車は日本全国どこの路線でもその対象となるが、基本的には百けん先生の独断と偏見によって選ばれる。もちろんなにか目的が他にあっては阿房列車にならないので、駅についても誰に会うわけでもなければ名所を訪れるわけでもない。ただ宿に泊まってお酒を呑むだけ。翌日はまた汽車に揺られるだけ。
それでもなんとなく楽しそうなのは、常に同行するヒマラヤ山系君と百けん先生との微妙なコンビと、百輭先生のとぼけた持論、そしていろんな意味で子供のような視点から鮮やかに描写されるその周りの様子が面白いから。