シュリの成長『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

監督:ライアン・クーグラー(2022 米)
出演:レティーシャ・ライトルピタ・ニョンゴアンジェラ・バセット

 アフリカの秘境にあるワカンダ国には、平和な日々が訪れたかに思われた。だが、若き国王ティ・チャラを失ったワカンダである事件が起きる。遺(のこ)されたティ・チャラの妹シュリ(レティーシャ・ライト)、母親ラモンダ(アンジェラ・バセット)、国王親衛隊を率いる女性戦士オコエ(ダナイ・グリラ)らの前に、新たな脅威が現れる。(Yahoo!映画より)


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 南の島のレンタルビデオ屋さんでは海賊版DVDを5ドルで販売しているので、見たい映画があると買うこともある。ただし当然ながら英語のみなので、登場人物があまりに早口だと訳が分からない。その点マーベル映画はいくらかわかりやすい(というほど聞き取れるわけではない)。『ワカンダ・フォーエバー』もわりと早く販売を開始したので購入したが、これはしかし中国語版だったので全くダメだった。なのでしばらくあきらめていたのだが、アマプラで見つけたので見ることができた。

 今回の物語はティ・チャラが病気で亡くなるところから始まる。前作までブラックパンサーを演じていたチャドウィック・ボーズマンが実際に亡くなっているのでこれは仕方がない、というより偉大なブラックパンサーを失ったワカンダ王国と残された家族を描くことにしたのは、全体がちょっと暗くはなるが英断なのではないかと思う。物語前半は息子を失った母と兄を失った妹を中心に描かれており、途中までは母がブラックパンサーになってしまうのではないかと本気で心配だった。腕ムキムキだったし。気づけば女性ばかりが強かった映画である。

 敵役としてはクルルカン/ネイモアとタロカン王国が登場した。見た目こそ海パンおじさんで微妙だったが、16世紀に白人から迫害された民が海へ逃げたというのはちょっと面白い。中米諸国から苦情が来そうな設定ではあるが、チチェン・イッツァの球技とかマヤ文字とかはもろに描かれていたので、了解は取ってあるのだろう。ネイモアはほとんど神様なので強いのは仕方がない。ただし弱点はあの設定だと他の地上勢力を倒せないので、もうちょっと考えた方が良かったか。敵の強さとこちらの強さとでバランスをとるのがうまくなかったというか説得力が弱かった。これまでのマーベル映画はその辺をうまく映像の力で納得させていたように思うのだが、今回の水の世界の映像はそこまでのパワーがなかった。

 ところでタロカン王国もそうだがアフリカのどこかにあるワカンダ王国が西洋文化の真似事のような発展を遂げていることについては苦情はないんだろうかと他人事ながら心配してしまう。発展とか進歩とかをわかりやすく映像にした結果ではあるんだろうけども、想像力の限界というかディズニーの限界というか、いや映像としては十分楽しいけどもそういったことはどうなんでしょうということを考えてしまうとちょっと楽しめなくなる瞬間ではある。