幻夜

東野圭吾の長編小説。
阪神淡路大震災の最中におじを殺した男とそれを見ていた女。
白夜行』の続編、ではない。二人の関係を考えれば、似て非なる話であることは明白。
白夜行』は主人公の二人の関係が最後まで伏せられ、読者は刑事らと共に推測するしかなく、その分だけ甘い推測が入り込む余地があったが、『幻夜』の方は二人の関係が最初から明かされており、現実はより厳しくかなしい。だからこそ物語のドンデン返しも決まっているわけで、その点私は『幻夜』の方が気に入ったのである。
ただ『白夜行』に対しても甘い推測を排除すれば似たような結末、似たような関係ということになるのでそれなら続編ということになるような気もするなあ。一番甘いのは私の読みかもしれない。
ドンデン返しと言えばこの作品のそれは粗筋を逆手にとっているようなもので、『変身』を読んだときにそういうのを書きそうな人だと感じていた私はなんとなく良いこころもち。この辺はもう少し説明しないと伝わらないかもしれない。
つまり文庫本の裏表紙にある粗筋に書いてあるのは紛うことなき物語の粗筋であって、嘘を書くわけにはいかない。けれども小説に騙されたい読者としては、その文章から読者を引っ掛けてもいいんじゃないかと思うのである。嘘を書くわけにはいかないけどもミスリードをそこから始めてもいいじゃない、という。うまい例を挙げられないのでやはりわかりづらいかもしれないが、この『幻夜』ではそれが少しだけうまくいっているように思う。
あと読んでいてもっとも興奮したのは美容室「モン・アミ」が出てきたとき。ポアロ好き確定。

幻夜

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