小学校の頃に少年が大力を得て活躍する『大力ワーニャ』という本を読んだ。確か兄弟の一番下のワーニャという子が役立たずだったのが、寝るときに屋根を持ち上げようとするのを毎晩続けていたらある日屋根がドカッと持ち上がり、大力を手に入れて活躍するという話だったと思う。これがなぜか印象に残っていて、この度『クラバート』を読んでいたらその『大力ワーニャ』を思い出した。調べたら作者が同じ人だった。ちょっと暗い東欧の雰囲気が似てるのかもしれない。ちなみに『大どろぼうホッツェンプロッツ』も同じ人。
門付けをしてあるいていた孤児の少年クラバートは、ふしぎな夢の声にさそわれて、コーゼル湿地の水車場をたずね見習となった。そして、この謎めいた水車場で、親方に魔法を習うことになる。
水車小屋に迷い込んだ少年の話で、不思議な水車小屋の生活はちょっとしたミステリのようで楽しい。魔法使いの見習いということになるが、魔法ばかり使っていると人間がダメになるとか、良いセリフがたくさんある。さすがに子供のおとぎ話というだけではない。
不思議なことを不思議なまま放り出されるのは私の好みではないのだが、本作品ではあまり気にならなかった。説得力があれば気にならないのかもしれない。人間て勝手です。おすすめ。
- 作者: プロイスラー,ヘルベルト=ホルツィング,中村浩三
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