世にも奇妙な人体実験の歴史

自らを犠牲にして科学の発展に貢献した科学者たちの列伝。という説明だけでは物足りない、知人たちのエピソードが次から次へと紹介される本。難しい専門用語はほとんどないので読みやすい。
例を挙げると、淋病と梅毒の違いを調べるために自身の局部に傷をつけて淋病患者の膿みをそこに塗りつける、動物の死骸を片っ端から試食する、自らの体内に寄生虫を住まわせてからアメリカへ帰って研究を続ける、伝染病患者の黒ゲロを飲んでみる等等、枚挙に暇がない。まさに壮絶。
一方で、当時の常識と新発見に対する偏見・圧力が、現代から見れば愚かしく見えて驚くと同時に笑えるのだが、そういったものと戦いつつ、試行錯誤を繰り返し新たな道を切り開いた科学者たちもまた、笑わされながらも尊敬の念を抱かざるを得ない。科学の進歩ってすごいなあ。
参考までに、収録されている内容は下記。
第1章 淋病と梅毒の両方にかかってしまった医師(性病)
第2章 実験だけのつもりが中毒患者に(麻酔)
第3章 インチキ薬から夢の新薬まで(薬)
第4章 メインディッシュは野獣の死骸(食物)
第5章 サナダムシを飲まされた死刑囚(寄生虫
第6章 伝染病患者の黒ゲロを飲んでみたら(病原菌)
第7章 炭疽菌をばら撒いた研究者(未知の病気)
第8章 人生は短く、放射能は長い(電磁波とX線)
第9章 偏食は命取り(ビタミン)
第10章 ヒルの吸血量は戦争で流れた血よりも多い(血液)
第11章 自分の心臓にカテーテルを通した医師(心臓)
第12章 爆発に身をさらし続けた博士(爆弾と疥癬
第13章 ナチスドイツと戦った科学者たち(毒ガス兵器と潜水艦)
第14章 プランクトンで命をつないだ漂流者(漂流)
第15章 ジョーズに魅せられた男たち(サメ)
第16章 超高圧へ挑戦し続けた潜水夫(深海)
第17章 鳥よりも高く、速く飛べ(成層圏と超音速) 

世にも奇妙な人体実験の歴史 (文春文庫)

世にも奇妙な人体実験の歴史 (文春文庫)