『科学と科学者のはなし』寺田寅彦

 寺田寅彦の随筆集。娘のために買ったものの、自分が先に読んでしまった。
 寺田寅彦といえば『吾輩は猫である』の寒月君のモデルとして有名。漱石関係の話にはよく出てくる人。本書にも漱石との関係についての文章がある。門下から見た漱石を垣間見られて楽しい。また「津波と人間」は昭和8年津波の後に書かれた文章だが、東日本の震災後の現代にも通じる話である。ちなみに青空文庫*1でも読める。その他日常生活から科学の芽を見つける科学者のまなざしを感じられる話が多かった。科学の基礎知識がしっかりしているから、目にするものから突拍子もないことを考えても考察がちゃんとしているし、次の発想につながっているという印象を受けた。こういう考え方ができる教育が望まれる。 
 
 ちなみに寺田寅彦は高知の生まれ。wikipediaによれば、
父親である寺田利正は土佐の郷士宇賀喜久馬の実兄で[8]、井口村刃傷事件で弟の切腹の際、介錯を務めたとされている[8]。 実の弟の首をわが手で刎ねたことがトラウマとなり、利正はしばらく精神を病み、土佐藩下士による討幕には参加せず、学問により社会を変えようと考えるようになり、そのことが寅彦が軍人より学者になることを選んだ伏線となっていると言われている。

 とのことで、幕末とのつながりがまた面白い。