偽のデュー警部

莫大な財産を持つわがままな妻リディアに疲れた歯科医ウォルターが、元・患者の不倫相手アルマと共に邪魔なリディアを片付けてしまおうと完全犯罪を企てるミステリ。豪華客船に乗船する際に偽名を使う必要があったため、クリッペン事件を念頭に置いていたウォルターが、よせばいいのにクリッペン事件を解決した警部「デュー」と同じ名前を名乗ったために殺人事件に巻き込まれてしまう。
以上の説明でもわかるようにクリッペン事件を下敷きにしているが、これはまあ知らなくても問題ないレベル。また脇役でチャーリー・チャップリンが出ていたり、各章のタイトルにチャップリンの映画名が使われていたりと凝っている。他に客船がUボートに撃沈されるエピソードも実際に起こった出来事らしい。こういう細細としたことは知らなくてもいいんだけども知ってる方がニヤリとできる。ニヤリといえば殺人事件であるにもかかわらずどことなくコミカルであるところも面白い。結末もどんでん返しでそのコミカルさにふさわしい。

偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)

偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)