仲良くしていただいているHさんから水槽セットをいただいて、ミカさんが熱帯魚を飼いはじめた。魚は家の裏海に行けばいくらでもとれるので、お金もかからず楽しめる。さらにHさんが捕獲した魚を分けてくれるので何もせずに素敵な熱帯魚ライフを楽しめているというありがたい話。
そして我が家の水槽は数種類の熱帯魚、カニ数匹、ヤドカリ、さらにちょっと珍しい(らしい)3本線クマノミも加わって大賑わいとなり、海の生き物が好きなハルカさんも大満足。
しかしある日、ふと気がつくと3本線クマノミがいない。そんなバカなと小さな水槽をよく探してみてもやはりいない。そして心なしかいつも水槽の隅にいたヤドカリがえらそうに中央のサンゴに陣取っている。さらにその日に限ってみんなエサの食いつきが悪い。総合して考えると、食べられちゃった?そこでハルカさん所有の「海のいきもの図鑑」で調べてみたところ、ヤドカリのページに魚を食べている写真が。ご丁寧にその横には「魚を食べてるよー」というタコのイラスト付き。やはり下手人はヤドカリ!おそろしいコ!
その数日後、ハルカさんが水槽を指差して「あれー?ハサミあるよー?」と言う。指差すところを見てみると、ヤドカリのハサミと頭部あたりのものと思しき殻が落ちている。殻はあっても中身はないから脱皮かしらんとも考えたが、それにしては落ちているハサミはなんというか殻だけでなく実が詰まっているように見える。そしてその近くにはヤドカリが住処としていた貝殻があるが、中身は空の様子。その近くにはなんとなくいつもより動きが機敏でハイテンションに見えるカニ。今回の犯人はたぶんカニ!おそろしいコ!
ここまできてようやく、更なる被害を食い止めるべく当局ミカさんが動いた。カニの大きいの2匹を隔離。ついでにヤドカリの入っていた貝も取り除き、ハルカさんの砂遊び用バケツに隔離。そしてヤドカリは動き出す。アレ?ヤドカリ、あんた生きていたのか!という人間たちの喜びを一顧だにせず、2匹のカニと1匹のヤドカリは威嚇しあっているのか慣れない場所に来たせいなのか知らないが活発に動き回っていた。結局一連の事件は「空腹ゆえの凶行」と判断され、「海のいきもの図鑑」に基づいて米・カツオブシなどが与えられた。
その翌日、「エビがいるよー?」とハルカさん。それはカニでしょう、とバケツを覗き込むとヤドカリが貝殻から出て、尻尾をびろーんとさせた状態でノビている。というかお亡くなりになっている。よく見たらカニも。「死んじゃったね」とハルカさん。意外と冷静。昨夜与えたエサには手をつけた様子もない。ヤドカリ殺しの濡れ衣を着せられたことへの抗議の餓死か(ヤドカリはたぶんクロだけども)、それとも環境に適応できなかっただけなのか。
真相はわからぬまま、小さな水槽に(だけ)平和が戻った。