さまざまな愛情の形『パリ、テキサス』

監督:ヴィム・ヴェンダース (1984 フランス=ドイツ)
出演:ハリー・ディーン・スタントンナスターシャ・キンスキー

4年前に妻子を捨てて失踪した兄のトラヴィスハリー・ディーン・スタントン)がテキサスの砂漠で行き倒れていたという連絡を受けたウォルト(ディーン・ストックウェル)は、目を離すと逃げ出そうとするトラヴィスに手を焼きながら、レンタカーで妻とトラヴィスの息子が待つカリフォルニア州ロサンゼルスへと向かう。(Wikipediaより)


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 ヴェンダースの名作ロードムービー。ということになっているが、今回はあんまりロードムービー感を感じなかった。久しぶりに見ると自分の視点が異なるのか、違う感想になるのはとても楽しい。

 テキサスの荒野を歩いていて行き倒れたトラヴィス、それを引き取りにはるばるロサンゼルスからやってきた弟ウォルト、夫と共にトラヴィスの息子を引き取ったウォルトの妻アン、弟夫妻に引き取られながらも実の母に会いたいトラヴィスの息子ハンター、そしてトラヴィスとハンターが探し求める妻であり母ジェーン、形は異なるけれどもそれぞれが抱いている愛情がどれも甲乙つけがたいというか、共存が難しいのだけれどもどれも大事にしてあげたいといったところ。

 トラヴィスの空白の4年と再び妻子を残して去っていく理由については本人の独白の中から答えを考える限りでは、今なお深い自らの愛情が再び家族を傷つけることを憂いたのかと思うが、何にしても元に戻れないところがアメリカ映画の一般とは違うところかもしれない。ヴェンダースの作品の中では虚しさが少なめでわかりやすく感じるのはナターシャ・キンスキーの美しさによるところが大きいが、描かれる感情が強めなのもあると思う。フラっと出てくるジョン・ルーリーもかっこよかった。おすすめ。