南の島と震災の記憶を描いた『絶唱』湊かなえ

 湊かなえの連作集。神戸の震災で受けた様様な傷を南の島で昇華する話。ではあるが、それよりも南の島(トンガ)の日本人が描かれていてちょっとうれしい。そもそもミカさんより南の島の人がいい感じに出てくるということで勧められた本で、確かに大体こんな感じではある。震災云々については大したことは言えないが、南の島の生活についてはちゃんと描かれていると保証できる。聞けば著者は海外協力隊経験者だというではありませんか。他の作品にはない湊かなえ要素である。
 小説で自分の知ってる場所が出てくるのはうれしいものである*1。それが知名度が劣る場所であればあるほど喜びもひとしお、つい場所を特定したくなったりする。しかし多くの場合はうまくボカされていて残念なことになる。私の場合は『海辺のカフカ』『1Q84』等なぜか村上春樹作品で生家の近所が出てきて驚いた覚えがある。近くに住んでたのかな。あとは出久根達郎作品とか。でもこれはちょっと違うか。高円寺ということでいうと思いつくのは『高円寺純情商店街』。いずれにしても一方的に親近感が湧き、舞台をイメージしやすくなる。それが良い場合も悪い場合もあるんだろうけど。
絶唱 (新潮文庫)

絶唱 (新潮文庫)

 

 

*1:今回はトンガなので厳密に言えば私の知ってる場所ではないが。