黄昏の彼女たち

サラ・ウォーターズの長編小説。
1922年、ロンドン近郊。戦争で男手を喪い、母とふたりで暮らすフランシスは、生計のため広すぎる屋敷に下宿人を置くことにする。広告に応じたのは若い夫婦、レナードとリリアンのバーバー夫妻だった。家の中に他人がいる生活に慣れないフランシスだが、ふとしたきっかけからリリアンと交流を深めていく。
以上amazonより粗筋抜粋。
『荊の城』『半身』で二連勝、『エアーズ家の没落』で一分けという印象のサラ・ウォーターズだったが、今回も負けに限りなく近い引き分けで、通算二勝二分け。鬱鬱とした雰囲気は良いが今回は百合要素が強く、終盤のちゃぶ台返しも弱かったのが私には合わなかった。思い返してみれば過去の良かった二作品にも百合要素はあったので、そもそもこれは著者作品の重要な要素だったのである。それがドカンと前に出てきた今回の作品で、今更ながら気がついた次第である。自分では百合要素も気にならないつもりでいたが、生生しいのは苦手らしい。
また作品の転回点となるリリアンの告白は読者の受け止め方により何とも解釈できるもので、この曖昧さがインパクトに欠ける点ではあるが同時に物語を複雑にしていて良い点でもあるかもしれない。だから受け取り方によってはやっぱり傑作と感じる人もいるんではないかな。著者の別の作品『夜愁』も読んでみようか悩むところである。