ワイルド・ソウル

垣根涼介の長編小説。
1960年代、日本政府によるブラジルへの移民政策で豊かな暮らしを夢見て海を渡った日本人が日本政府に復讐、というかアピールする話。よく調べてあるのかすごくリアル。70年代末に映画化されてそうな話である。知らんけど。
戦後の混乱期とはいえ日本政府によって行われた棄民政策という事実がまず衝撃的で、これを軸に前半は移民たちの壮絶な体験が語られ、後半で復讐劇に突入する。しかし日本的なじめっとした憎しみというのは薄く、どことなくカラッとしていて読みやすい。単純なエンターテイメントしても十分面白いが、それ以上に、棄民政策を取らざるを得なかった日本の戦後と、それを元に築かれた現代日本に対する疑問など、いろいろ考えさせる作品。おすすめ。

ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)

ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)

ワイルド・ソウル〈下〉 (新潮文庫)

ワイルド・ソウル〈下〉 (新潮文庫)